23歳で早世した京大院生・山口雄也さん 自らドナーとなって支えた母親の無念と感謝
献血を呼びかけたブログが炎上
移植後、血圧低下や下血をするなど体調はよくなかったが、病室で大学院の講義をZoomで受け、ツイッターなどのSNSも精力的に発信していた。 七美さんは「体調がすぐれないのだから、治療に専念してほしい」と思ったが、どれも全力で取り組んでいたため言えなかった。 一方、雄也さんは4月上旬にある“騒動”を起こす。ブログで献血を呼びかけたのだが、大炎上してしまったのだ。書き出しが<誰かの命を救ってみたい!!! と思ったことありませんか。ありますよね。なければ人間じゃないですよまじで(笑)〉(2021年4月8日 ブログ「或る闘病記」)で始まっていたことが大きな原因だった。のちに撤回したが、「上から目線で偉そうだ」「人にお願いする言い方じゃない」などの批判が殺到した。 白血病の患者は、抗がん剤治療や放射線照射によって、移植の前後に自分で造血ができなくなる。そのため大量の輸血が必要になるが、雄也さんは献血に助けられた経験から、その重要性を伝えたかった。心が痛みながらも、多くの人に読んでもらうため、わざと神経を逆なでするような書き方をしたという。 しかし、想定以上の批判に雄也さんの心は深く傷ついた。両親は、2019年1月に「がんになって良かった」という雄也さんの言葉がSNSで炎上したときには何も言わなかったが、今回は睦雅さんが「ほどほどにしとけよ」と声をかけた。息子の体調が心配で、親として言わずにはいられなかった。
告別式に流れたピアノ曲
その炎上した記事が、ブログ「或る闘病記」の最後の投稿となった。復帰に向けて、池亀医師が驚くほど歩行訓練に取り組んでいた雄也さんだったが、2021年6月6日、旅立った。 2日後、京都市内の斎場で告別式が営まれ、約400人が参列した。弟の提案で、雄也さんが生前にピアノで弾いた曲「渚のアデリーヌ」が流された。 コロナ禍のため、式をおこなうかどうか両親は迷った。雄也さんはこの1年間、家族しか面会ができず、多くの友人らに会いたいだろうと思い開催した。式で多くの旧友や恩師らと再会することができ、雄也さんは喜んだに違いない。