「タラコ」「チタンマッスル」「GBB」……。クラブ設計家が“これは画期的!”と感じたクラブを紹介【クラブ選びをクール解説!】
「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回は、長年クラブに携わってきた宮城氏が「これは画期的!」と感じたモデルについて語ってもらった。
「発想」や「製法」が画期的!
みんゴル取材班(以下、み):クラブデザイナーの視点から、コンセプト、構造、素材などが画期的で、クラブの進化にも貢献したモデルを教えてください。真っ先に思い浮かぶのはタラコアイアンですが。 宮城:プロギアの「インテスト」はやっぱり画期的でしたね。とくにロング番手はウエイトのかけ方とか「Qi10」や「パラダイム」などいまどきのカーボンドライバーに近いものがありました。同じ中空アイアンの「HI-858」(フォーティーン)も構造が画期的でした。一般的な中空モデルはフェースを後から溶接しますが、「HI-858」はフェースとネックが一体型で、後ろに箱(ボディ)をくっつけた形になっていました。そうすることで中空なのに打感がよく、スピンも増えすぎないクラブになっていました。 み:なるほど。アーニー・エルスが全英オープンで「HI-858」を使って優勝できた理由もなんとなくわかります。アイアンでほかに印象に残っているモデルはありますか? 宮城:製法が画期的だったのは「J'sチタンマッスル」(ブリヂストン)です。溶接ができないチタンと鉄を爆着(爆発圧接)という方法で接合していました。当時、海外メーカーには真似できない技術でした。 み:古い話になりますが、ロングホーゼルが当たり前だった1988年に登場した「S2H2アイアン」(キャロウェイ)のコンセプトには驚きました。見た目は違和感があるのにすごく打ちやすかったのを覚えています。 宮城:90年代後半に出てきたダンロップやフォーティーンのオーバーホーゼルアイアンもコンセプトは同じでした。通常はホーゼルの穴にシャフトを挿し込みますが、ホーゼルの外側にシャフトをかぶせることでネック重量を減らして低重心化を図ったアイアンです。量産には向かないけれどアイデアとしては画期的でした。 み:オーバーホーゼルはパターでよく採用されている接合方式ですね。ウッドではどんなモデルがありますか? 宮城:度肝を抜かれたといえば「グレートビッグバーサ」(キャロウェイ)です。当時、ステンレスでこんなにデカいヘッドが作れるのかと驚きました。ロフトも10.5度表記で12度あったので、メタルウッドに悪戦苦闘していたアマチュアもみんな楽に打てるようになりました。いま考えてもメタルウッドの進化と普及を促したのは「グレートビッグバーサ」でした。 み:確かにパーシモンからメタルウッドに移行するときはみんな手こずりました。最近のモデルはどうでしょう? 宮城:筆頭は「パラダイム」(キャロウェイ)でしょう。ヘッドの一部にカーボンを貼り付けるくらいならどのメーカーでもできますが、ヘッドの真ん中を鍛造カーボンで作って、金属のフェースとウエイトを前後につける発想は画期的です。 み:宮城さんは「ステルスプラスFW」(テーラーメイド)を高く評価していましたが、画期的な部分はどこですか? 宮城:チタンボディとカーボンクラウンでフェアウェイウッドを作るとヘッド重量が60から80グラムくらい足りなくなります。その分のウエイトをどこか一箇所に置くと非常に振りづらいクラブになってしまいます。でも、「ステルスプラスFW」はソール全体に80グラムのプレートを配置しているから振りやすい。テーラーメイドは「Vスチール」「Mシリーズ」などFWが得意なメーカーですが、後にも先にも「ステルスプラスFW」を超えるFWはないと思います。 み:個人的には宮城さんの設計した「MT-28」(フォーティーン)を推したいのですが。アプローチで初めてバックスピンがかかったときは感動しました。 宮城:スピン性能の影響するのはフェースだけではありませんが、「MT-28」はフェース面をフラットにミーリングした上で、彫刻でスコアラインを入れた初めてのウェッジ。製法としては画期的でした。
みんなのゴルフダイジェスト編集部