重力波の重要な性質「トランバース・トレースレス」を知ってますか?じつはこれが重力波を検出する手段です!
重力波の検出にはこのように使われている
この性質を利用して、重力波検出器は、波の進行方向に対して垂直な面内で、互いに直交する2方向での伸び縮み(片方が伸びているとき、もう一方は縮む)を活用しています。 ちなみに、横波のことは英語で「トランスバース」(transverse)とよび、この面積保持のことはある行列の対角成分の総和(トレース、trace)がゼロであることとして数学的に表現できます。 そのため、このトレースがゼロであることは、「トレースレス」(traceless)とよばれます。よって、横波かつ面積保持の性質を有する重力波の特徴を「トランスバース・トレースレス」とよぶことがあります。 すでに想像がついた読者も多いと思います。そうです、先ほどのレーザー光の受信器と鏡の間の距離を測る装置を2台用意して、互いに垂直な方向になるように配置すればよいのです。 ただし、実際の観測では、レーザー光の到着時刻を測るわけではありません。それでは、どうするのでしょうか。答えは、2方向の鏡から戻ってくるレーザー光を合わせたものを観測するのです。 これには「光の干渉」を用います。
なぜ重力波望遠鏡は2本の腕が伸びているのか
実際に重力波を検出するために使われているものが「光の干渉」です。 まず、レーザー光は、光の波動としてやって来ます。これは波ですから山や谷があります。話を簡単にするため、重力波が通過しない状況では、両方向からのレーザー光の山と山がちょうど重なるようにあらかじめ調整してあるとしましょう。この場合、受信器では最も明るい状態でレーザー光を検出することになります。 まず、単一の発信器から単一の周波数でのレーザー光を発射します。途中にハーフミラーとよばれる、表面に特殊な被膜を施したガラス板を設置し、やってきた光のうち半分をそのまま透過させ、残り半分の光を鏡のように反射することで、2方向に分岐させます。この場合、両方のレーザー光の周期はぴったり同じものになります。