密猟からサイを守れ。ツノに無害な放射性物質を注入
南アフリカの科学者たちが、サイの密猟、ツノの密輸の最新対抗策として考えたのは、サイのツノに無害の放射性同位元素を注入すること。
最新の密猟・密輸対策
研究しているのは、南アフリカはヨハネスブルクにあるウィットウォーターズランド大学。サイのツノを売買する密猟者対策として、サイのツノに(サイにとっては)無害の放射性同位元素を注射する試みを、数年かけて実行していくことが発表されました。 今回、サイ20頭のツノにドリルで放射性同位元素を注入。今後、6カ月間は健康状態をモニタリングする予定。研究が成功すれば、より多くのサイはもちろん、ゾウやセンザンコウ、ひいては植物などに対象を広げていきたい考えです。
なぜツノに放射性同位元素を?
サイのツノに放射性同位元素を注入することが、対策としてどう活きてくるのでしょうか。実はこれ、密輸に直接関係しており、密猟対策としては間接的な方法です。 密猟者の多くは、不正に入手したサイのツノをこれまた不法に国外へと持ち出します。ツノ注入の狙いは、この国外へ持ち出す前に捕まえることにあります。 国の外に出る方法…。南アフリカ含めほとんどの空港や港には、核兵器から交通機関を守るためのアレがあります。そう、放射性物質を検出する機械です。 なので、もしサイのツノを密輸しようと思ったら、放射性同位元素注入済みのツノは、この機械でひっかかり警察が出動します。ひいてはこれを所持している人、そしてその入手経路の捜査につながるというわけ。
サイには無害である
研究チームが声を大にして言いたいのは、サイの健康には問題はないということ。プロジェクトを率いるJames Larkin教授は、プレスリリースにてそれを明確に説明しています。 「(ツノへの注入は)毎回、専門の獣医が密に関わって管理をし、影響が出ないようケアを行なってきました。また、数カ月に及ぶ研究とテストの結果、注入した放射性同位元素が、動物またはその動物のケアをする周囲の人間に、健康またはその他のリスクを及ぼさないことを確認しています」 一方で、サイのツノを人間が摂取した場合、人間にとって毒になるだろうと、研究者の1人がメディア取材にてコメントしています。これは密輸されたサイのツノが、薬物療法で用いられることがあるゆえの発言。
サイを保護するために
Larkin教授いわく、南アフリカでは、ツノ目当てで20時間に1頭の頻度でサイが殺されている状況にあります。 サイのツノは装飾品や医薬品の原料として世界中で使用されており、ブラックマーケットでは非常に高値で取り引きされています。時に金やダイヤ、コカインよりも高値になることもあるそう。 サイを保護する国際的な団体によれば、2023年に南アフリカで殺されたサイは499頭、2022年よりも減少しています。現在、世界には1万6800頭のシロサイが、6500頭のクロサイがいるといわれており、シロサイの8割、クロサイの3割はアフリカに生息しています。 Source: Wits
そうこ