「あなたはもっとできるはず」という親からの呪縛…“過剰な期待”をかけられた子どもの末路
子どもに自分の夢を押し付けていませんか?
子供の将来を思うあまり、親が自分で叶えられなかった夢や理想を子どもに押し付けてしまっていませんか? 【賢い子の育て方】勉強ができる子が“家”でしていること 発達障害の不登校児を育てながら、YouTubeでも大人気の精神科医さわさんも、子供時代に母親からの過剰な期待を背負わされていたのだそうです。 そこで今回は、そんなさわさんの『子どもが本当に思っていること』という書籍から、実体験を交えつつ、親が夢や理想を子どもに押し付けた結果、どうなるのかが解説されている「親の理想や夢を押しつけないで」という項目をご紹介します。 親が良かれと思ってやっていることが、気付かぬうちに子供にとって悪影響を及ぼしている事もあります。さわさんの「子どもの心が分かる本」で、親子の関係をいま一度見つめ直してみましょう。
子どもの心の声「親の理想や夢を押しつけないで」
子どもに過干渉になる親御さんの中には、自分たちの夢や理想を子どもに託すケースもあります。 たとえば、偏差値の高い大学に行ってほしいとか、安定している大企業に勤めてほしい、などです。 「父親が医者だから、わが子も医者に」というのはよくある話ですが、わが家もそうでした。正確には父の希望ではなく、母の強い希望でした。 「子どもたちを医者にしたい」という母の強い思いがあって、兄も姉も私も、小学校のころから猛勉強をしていました。 母は教育熱心だったので、わが家では勉強がすべて。たとえば私が料理に興味を持っても、「勉強さえしていればいいから」と言われて、やらせてもらえませんでした。 結局、母に機嫌よくいてもらうためには、子どもたちが勉強するのが一番よかったのです。 そして、小学1年生から進学塾に通っていた私は、4年生のときに塾の全国テストで1位を取ったり、偏差値75までいくなど、母を大喜びさせるほど成績が上がりました。 当然、母は私に盛大な期待をします。でも、それが私の苦しみのはじまりでした。 当時は5年生になると、中学受験に備えて優秀な子たちが一斉に塾に入ってきます。それにともない、私の成績はみるみる下がっていきました。 それまで私がいい成績を取れていたのは塾生の母数が少なかったからで、そこまで学力が高いわけではなかったのです。 でも、私はそのことを受け入れられず、情けない話ですが、塾のテストでカンニングをすることもありました。 成績が下がって母親が不機嫌になるのが怖くて、嘘でもいいから自分の成績を下げたくなかったのです。 母は子どもに怒鳴るとか、暴力を振るうということはなかったのですが、目に見えて不機嫌になったり、「やればできるのに情けない」と言われたりするのが、子どもの私にとってはつらくてたまりませんでした。 その後、中学はなんとか第一志望の進学校に入学できたのですが、そのときの私の思いは「なんとか生き延びた……」という感じです。 かろうじて入学できた中学と高校では、ずっと落ちこぼれでした。 このころは表面的には友だちもたくさんいて、楽しくすごしていたのですが、心のどこかで、なんとなく消えてしまいたいなと思うことも多かったです。 中学と高校では成績が悪かったので、「自分はなんのために生きているのか」「私が生きている価値なんてない」と漠然と感じていました。 高校3年生のときには、医学部を受けられるような成績ではなかったため、理工学部か看護学部を受けようとしましたが、それも母は猛反対。 本当は国立大の医学部を目指していたけれど、結局、1年浪人したあとに私立大学の医学部に進学しました。 もともと私の母は家族に対する愛情がとても深い人で、両親の仲もよく、家庭の雰囲気は悪くありませんでした。 ただ、子どもの教育に関してだけは過剰だったと感じています。それは、母自身のコンプレックスが関係していたと思っています。 母はもともと薬剤師でした。学力が届けば医学部に入りたかったようで、薬剤師になったことを後悔していました。「お母さんは、あなたたちに同じ後悔をさせたくないのよ」と、よく言っていました。 また、わが家の場合、親せきに医師が多かったことも、母の教育熱に拍車をかけていたと思います。 でも、親の夢は子どもの夢ではありませんよね。 私の母は医師になれなかったことを後悔したかもしれないけれど、母と私は別の人間です。 親は親、子は子です。親の「こうあってほしい」は、子どもにとってはそうではないかもしれないし、親が叶えられなかった人生を子どもに託すのは、子どもにとっては大きな負担になりえるのです。