「いろんな壁にぶち当たってます」オランダ2年目で躍動する上田綺世が本音で明かした“進化のカタチ”。「一回やって一回できたことは薄っぺらい自信」【現地発】
「去年できなかったプレーに対して自信を持ってプレーできている」
9月6日、ホームにトゥベンテを招いたフェイエノールトは前半半ばまで相手の勢いに呑まれてミスが相次ぎ、ファンのため息を誘っていた。本来なら試合を支配するはずのフェイエノールトなのに、前半25分頃のボール支配率はわずか35%に過ぎなかった。 【動画】上田綺世が今季2点目! “らしい落とし”から決めた完璧ヘッド弾をチェック! 最前線でボールを収めることができなかった上田綺世も、前半途中まで本来のプレーを披露できないひとりだった。しかし28分、背番号9を背負った生粋のストライカーは、左SBウーゴ・ブルーノのクロスを豪快なヘディングシュートでゴールネットを揺らし、チームに先制弾をもたらしスタジアムの雰囲気を一変させた。 この上田のゴールをキッカケに戦況がガラリと変わり、フェイエノールトはトゥベンテを圧倒する時間帯を作った。43分に韓国代表MFファン・インボムが追加点を奪うと、「今日はアジアの日だ!」と叫ぶオランダ人記者がいた。トゥベンテの反撃を1点に抑えたフェイエノールトは2対1で勝利した。 トゥべンテ戦のゴールは、上田がフェイエノールトで取り組んできたことが、お手本のように現れたプレーだった。それは相手DFを背負ったポストプレーから、スコアリングポジションに入り込んでゴールを仕留めるということ。CBベーレンからのクサビを正確にファン・インボムに落とすと上田は反転してファーサイドに走り込み、敵の死角に入ってクロスに合わせた。 「中盤の選手が流動的に動くなかで、その隙間を見つけてクサビを受けて、中盤の選手を活かしつつ、自分はクロスなのか、もう一回(自ら)抜け出すのか(選択して)中に入っていく。その後にも、シュートは入りませんでしたが、自分の得意な抜け出しからチャンスは作れてきていると思う。あれは決めないといけなかった。次に繋がるポイントはいっぱいあったと思います」 このゴールひとつで、チームも上田も自信を取り戻した。後半に入るとトゥベンテのCB陣が強靭なフィジカルを活かした上田のキープに手を焼き、苛立ち混じりにファウルを続ける時間帯があった。 上田に限らず、サッカーチームやサッカー選手を見ていて「自信とはなんだろう」と思うことがある。このレベルの選手たちは皆、サッカーエリートたち。なかでもストライカーは「自分はできる」「自分はゴールを奪える」という自信が大事なはず。そんな彼らが自信を求めて苦しむ姿を我々が見るのは往々にしてよくあることだ。 トゥベンテ戦直後、「開幕1週間前のヨハン・クライフ・スハールでは自信が観客席に伝わってきた。しかし第2節のスパルタ戦では『いつもの上田さんらしくないな』というプレーがあった。それは自信があっても満タンではないからか? 上田さんはストライカーだから『いつでも点を取れる』『いいプレーができる』という自信をお持ちのはずですよね?」と素朴な疑問を彼に投げかけてみた。 「別にそんなことはないです」 ということは不安を抱えながらプレーすることもあるのだろうか。 「もちろん。人なんで誰でも(不安が)あると俺は思ってる」 この日のオランダは暑く、しかもCL直後の連戦ということもあり、トゥベンテ戦で84分間プレーした直後の上田はいつもより疲れているようだったが、それでも正直に、丁寧に彼が思っている「自信」を説明してくれた。 「自信には、自分への信頼感みたいなところが僕はあると思ってます。やっぱり信頼は細かいことをどんどん積み重ねていかないと勝ち得ないじゃないですか。それはチームからもそうだし、自分のパフォーマンスに対してもそう。成功体験をあまり掴めてない状態で試合に出ても、自分が成功するイメージはないですよね。 例えば僕が自信を持っているヘディングとか動き出しとか、クロスへのゴール感覚などは、僕がサッカーを始めてずっとやりながらいっぱい失敗して、その失敗の上に成功が積み重なっているからこそ、自分への信頼感とか自信を持ってプレーすることができます。 僕がいま、自信を持ってプレーできているのは、去年1年間、不安もありながら、そのなかでもいろいろトライして、自分の形を見つけて少しずつ成功体験を掴んだから。去年できなかったプレーに対して自信を持ってプレーできている」
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