アベノミクス3年 指標から見る成果と課題
実感できない好景気
一方で、好景気を実感できないという声を多く聞きます。経済統計でもまさに、そのような状況がわかります。主に(1)民間設備投資が伸びない、(2)実質的に所得が増えないためです。 前の図では企業の設備投資動向も描いています。経常利益とは異なり、アベノミクス期でも増加していません。アベノミクスで民間設備投資があまり増加しないというのは、円安でも輸出量が増えなかったということを意味します。私は、円安になっても輸出量はけして増えない (為替よりも生産構造や海外景気のほうが重要)と考えていたので、当然に思えます。しかしながら、一般には貿易立国の日本では、円安がきっと景気を回復させると考えられ、アベノミクスの円安は、とくに企業からは歓迎されてきたようです。 もちろん、円安は輸出企業の業績を回復させます。たとえば、1つ売るのに80円の売り上げだったものが、円安で120円へと売り上げ増加効果をもたらしたからです。けれども、輸出企業は、利益が出たからといって、急に高い価格でたとえば部品などを買い取るようになるわけではありません。 みなさんも、給料が増えたからといって、100円のものをあえて200円で買ったりはしないでしょう。そのため円安のみでは、トリクルダウン(徐々に利益の裾野が広がること)が起きにくいのです。 円安でも生産量が増えないと、国内の中小企業への注文は増えず、したがって国内では多くの人には円安のメリットが実感できません。一方で、食品やガソリンなど輸入がかかわる財の価格は上昇してしまいましたので、円安のデメリットは実感できてしまいます(ただし、ガソリン価格は原油安で下がりました)。
むしろ所得が減っている
所得は世代によって状況は異なりますが、どの世代でも減ってきています。私も、先日発表された総務省「平成26年 全国消費実態調査」をみて、改めて、驚きました。 まず、現在50代が世帯主の世帯は、例えば10年前と比べて世帯としての収入はそれほど減っていません。けれども、働く人1人当たりの収入は減っています。すなわち、この10年で、配偶者が働きに出るような家が多くなり、(平均的な)世帯収入が維持されているのです。