アベノミクス3年 指標から見る成果と課題
安倍政権は2015年9月、アベノミクスの第2ステージとして「新3本の矢」を打ち出しました。従来のアベノミクスは「金融政策」「財政政策」「成長戦略」の3つを柱とするもので、円安や株高などの成果をもたらしました。一方で、景気が実感できないなどの声も根強くあります。これまでのアベノミクスの成果をどう評価するか。岡山大学経済学部の釣雅雄・准教授が経済指標を中心に振り返ります。 【図】日本の1人あたりGDPが韓国に追いつかれるって本当?
アベノミクス期の景気回復
現政権は2012年12月に発足したので、アベノミクスはちょうど3年を終えたところです。アベノミクスは様々な政策からなるパッケージで、それぞれについて賛否はあります。けれども、全体としては、多くの経済指標で日本経済は良い状況であることが示されています。
アベノミクスを振り返ると、為替レートは円安となり、それに伴い株価は上昇しました。2015年5月には、東証一部の時価総額が(上場企業数に違いがあるものの)バブル期を上回るほどになりました。また、失業率は下がり続けており、新卒の就職状況も良好です。 いろいろな統計・数値のなかで、最もアベノミクスの特徴が表れているのが企業収益です。図は財務省「法人企業統計」を用いて、売上高、経常利益、設備投資の動きを描いたものです。とくに経常利益(3期移動平均も示している)は、安倍政権発足直後からみるみると回復しています。円安の影響でしょう。他方、民主党政権下では、リーマンショック後に回復したのち横ばいで推移していました。 GDP(国内総生産)についても、名目ではリーマンショック以前の2007年度までには回復していないものの、実質では2014年度にほぼ同水準となりました。ただし、名目GDPでも、企業の経常利益と同じく、2012年後半からの回復がみられます。 残念ながら、インフレ率については目標の2%にまったく届いていません。2015年11月の消費者物価指数・総合は対前年同月比0.3%です。原油価格の下落が影響していますが、その影響をある程度除いた 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合でも0.9%にとどまります。ただ、本来、金融政策は、安倍政権ではなく日本銀行が担うものではあります。