世界のチョウが福島県矢祭町に 来春昆虫館オープン 各国から収集 標本3万点展示
チョウ類などの昆虫標本を集めた「昆虫館」が来春、福島県矢祭町小田川に誕生する。アゲハチョウ類研究家の中江信(まこと)さん(69)=横浜市=が、国内唯一の展示となる南米原産の絶滅種をはじめ世界各地で集めた希少種を提供。賛同する研究者や愛好家から届く品々と合わせ、展示は3万点を超える。有志団体が古民家や土蔵を改修して展示施設「昆虫館」、保管庫、研究室を設ける。世界的に人気のチョウ類を軸に、幅広い年代が昆虫の魅力に触れ、自然の大切さを学べるスポットを目指す。 プロジェクトは町内外の有志で構成し、中江さんが会長を務める一般社団法人「虫の里・福島奥久慈設立の会」が進めている。拠点の完成イメージは【図】の通り。小田川地区にある築約150年の民家と土蔵を再生する。中江さんが所有する標本約1万点の他、各国の研究者や採集家が寄せるコレクションを展示・保管する。既に2万~3万点の申し出があり、今後も募る。
昆虫館は標本の観覧に加え、昆虫に関する書籍の閲覧、外国人を含む愛好者が交流するサロン、講演などに使える施設とする。土蔵には町内に生息している昆虫の採集・標本づくり、データベース化などの活動を行う「研究室」も設ける。 来年3月には改装後の土蔵を先行して開所し、中江さんの標本を飾る。南米原産の絶滅種で世界に13点しか現存せず、日本では中江さんが唯一保有する「イピタスタイマイ」や、台湾の固有種「フトオアゲハ」などの希少なアゲハチョウ類を披露する。当面は週1回開館し、無料で見学者を受け入れる。整備完了と全面オープンは来年中の予定。 国立科学博物館によると民間が主体となった標本施設は全国的にも珍しいという。中江さんらはふくしま森の科学体験センター「ムシテックワールド」(須賀川市)、観光施設「ムシムシランド」(田村市)など昆虫に関する他施設との連携も目指している。 ■アゲハ研究の第一人者 中江信さん 30カ国以上で調査・採集