世界のチョウが福島県矢祭町に 来春昆虫館オープン 各国から収集 標本3万点展示
中江さんは、国内外のアゲハチョウ全603種の写真を集めて解説を添えた図鑑「世界のアゲハチョウ図説」を出版するなどアゲハチョウ類研究者として知られる。2021(令和3)年に出した図説はロンドンの大英博物館の研究者からも引き合いがあった。 千葉市出身。幼少期は野山を駆け回る「昆虫大好き少年」だった。早稲田大で生物同好会に入り、当時、国内で採集できたアゲハチョウ20種を全て捕った。卒業後は外資系石油会社に就職。海外出張で訪れた熱帯地域を中心とする30カ国以上で虫捕り網を振り、チョウ類を調査、採集してきた。 矢祭町を訪れたのは、古民家再生やまちづくりイベントを手がける一般社団法人ニワトコ代表理事の矢崎潤子さん(73)=棚倉町=との出会いが始まりだった。矢崎さんと親しい早大生物同好会の仲間に誘われて矢祭を訪れ、里山が残る環境に心躍らせた。 数年前から町内に通い、里山「来る里の杜(くるりのもり)」での昆虫採集や生態系保護のための植樹に携わっている。自然環境や地元の暮らしぶりに引かれ、親交ある人々と共に昆虫館の構想を温めてきた。里山を管理する金沢地域里山づくり実行委員会長の片野盛好さん(82)は「中江さんたちと一緒に、里山の自然を生かした活動ができるとうれしい」と期待している。
中江さんは「アゲハチョウについて知ってもらうだけではなく、昆虫の魅力や自然の偉大さに興味を持ってもらえる空間をつくり上げたい」と意気込んでいる。 ■支援金、標本提供呼びかけ 「虫の里・福島奥久慈設立の会」は施設の整備に向け、支援金や昆虫標本の提供を呼びかけている。 支援金は企業や団体、個人から広く募り、古民家の改修や敷地内の整備に充てる。昆虫標本は愛好者らを対象に、保管している標本箱1箱につき管理費1万円で受け付ける。標本箱の大きさは幅42センチ、奥行き51センチ、深さ6センチ以内とする。 問い合わせは事務局。