2024年の食品業界、「2ケタ増」ヒットここにあり
能登半島地震で始まった2024年。相次ぐ災害や令和のコメ騒動、引き続きの猛暑、物価高、人手不足の逆風の中で、地味ながら日常的な食品で「前年比2ケタ増」の売り上げを達成したものがあった。 オイスターソース、ホットケーキミックス、ブロッコリー……。ヒットの秘密は新しい提案による顧客層の開拓と、「簡便」「時短」ニーズの汲み取りだった。
新レシピの提案で「定番商品」が売り上げ急増
「そうめんをオイスターソースで食べてみませんか?」。今年6月、味の素は東京・渋谷の井の頭通りで、「そうめんを『Cook Do』オイスターソースで食べるお店」を開店。俳優の藤原竜也さんの顔を拡大した写真を掲げ、糸状ののれんが口元から垂れ下がった店構え。藤原さんがそうめんをすすっているように見えるとして話題になった。 提供したのは同社レシピサイトで紹介する「混沌(カオス)ソーメン」と名づけたメニュー。中華調味料ブランド「Cook Do(クックドゥ)」のオイスターソースにごま油やレモン汁、おろしにんにくを合わせてそうめんにあえ、蒸し鶏やトマトなどをのせた。1食300円、5日間で1000食販売する人気ぶりだった。 クックドゥのオイスターソースはプラスチックボトルで110グラム入りと200グラム入りの2種類。様々な料理にコクや甘みを足すのに使える点を訴求し、中華料理向けから普段使いの調味料としての浸透を図っている。 2023年放映のCMでは卵かけご飯、みそ汁、カレーなど意外なメニューにオイスターソースを加え、藤原さんがおいしさを表現。「信じるか信じないかはあなた次第です」と投げかけ、試してみようかという消費者心理を刺激した。 特に、湯引きしたレタスにオイスターソースをかけるだけの「瞬間消滅」レシピでは、2023年6月から長野県の地方紙・信濃毎日新聞に、藤原さんの顔でレタスが包める「レタス保存用新聞」の全面広告を掲載した。売上げを一気に伸ばして8月、約4年ぶりにトップシェアを奪い返した。勢いは継続し、2024年も「2ケタ成長」を維持している。 味の素のオイスターソースのように、日常使いで「定番」と呼ばれる食品でも売り上げを大きく伸ばしている商品が存在する。筆者は「日本食糧新聞」「食品新聞」「食料醸界新聞」「冷食タイムス」などの専門紙で最近3カ月間に「2ケタ(桁)」の表現がある記事を調べてみた。 オイスターソースの次に注目したのがホットケーキミックスだ。日清製粉ウェルナ、昭和産業のプレミックス(調整粉)の上期(4~9月)販売状況は、数量ベース、金額ベースともに、前年を上回ったという。日清製粉ウェルナは春先にテレビCMを投下したこともあり、「日清 ホットケーキミックス 極もち 国内麦小麦粉100%使用」が大きく伸びた。昭和産業も主力の「SHOWAホットケーキミックス」のほか、「きれいに焼ける魔法のホットケーキミックス」「ケーキのようなホットケーキミックス」が好調だった。 低価格のプライベートブランド(PB)が増えているが、国内麦小麦粉の打ち出しや、食感の提案が消費者から支持された。業界関係者の中では、8月後半からのコメ不足の際に、コメの代替としてホットケーキが注目されたとの見方もある。