トヨタ圧勝のカギはタイヤ戦略。「レース前には良い状況を判断」とテクニカルディレクター/WECサンパウロ
7月14日に決勝が行われた2024年WEC第5戦サンパウロ6時間レースでは、2番手からスタートした8号車トヨタGR010ハイブリッド(トヨタ・ガズー・レーシング)が後続に1分8秒の大差をつけて総合優勝を飾った。 【写真】フリープラクティス時からミディアムタイヤへの調整を進めていったトヨタ・ガズー・レーシング トヨタ・ガズー・レーシングのテクニカルディレクターであるデイビッド・フルーリーは、今回の勝因としてタイヤ戦略とそのマネジメントをあげる。 優勝を飾った8号車は、6時間のレースを通してミディアムコンパウンドのみを使用していた。他のほぼすべてのハイパーカーメーカーはミディアムとハードを組み合わせて使用したり、交互に使用したりしていたため、この選択の差が勝敗を分けたという。 「我々は、トラックがもっとも暑かったFP2に、タイヤを連続してテストした。その結果、レース前には良い状況を判断することができ、ミディアムタイヤが安定して機能するようなセットアップを進めていった」 「ただ、ライバルのなかにはミディアムとハードを組み合わせるというエキゾチックな戦法のチームもあった。レース後の分析は興味深いものになるだろうが、ペースの違いは明らかで、この選択の違いにかなり関係していたはずだ」 レースの前半はポールシッターの7号車が支配していたこともあり、ワン・ツーフィニッシュを達成していた可能性も充分にあったが、7号車は燃料圧力に問題が発生し、コントロールボックスを交換するために長いピットストップを余儀なくされた。 フルーリーは、7号車の方が2台のトヨタのなかでは速かったと認めたが、それはセットアップとタイヤマネジメントの差によるものだったとも明かしている。 ■「いくつかのコーナーでパワーが落ち始めた」と7号車コンウェイ 一方、7号車のクルーであるマイク・コンウェイは、当時レースをリードしていた7号車が味わった挫折について語った。 「いくつかのコーナーで少しパワーが落ち始めたんだ」と彼はSportscar365に明かした。 「その後のインラップではターン2でパワーが大きく落ち、それからは加速がうまくいかなくなってしまった」 「燃料関係の問題があったはずだ。そこで残念ながら部品を交換しなければならず、多くの時間を失うことになり残念だった。間違いなくこれで勝利を逃すことになったよ」 2時間が経過したころには、フルコースイエロー時の手順違反によるドライブスルーペナルティを受け、その後にマシンに起きたトラブルは7号車から首位の座を奪うことになったが、代わりに僚友8号車がレース後半を制した。 「フルコースイエローでペナルティを受けたが、これは自分のミスだった。充分に減速できなかったんだ。だが、その時点では数周以内にトップに復帰することができていた」 「マシンは本当に良く、ペースもタイヤの摩耗も良好だった。レース前半は本当に力強い戦いができたと思うし、その後も素晴らしい挽回を見せることができたね。勝利した8号車はクリーンなレースをしたね。彼らを祝福するよ」 ■優勝8号車のハートレー「トラブルのないレースができて満足」 優勝を飾った8号車のブレンドン・ハートレーは、レースはタイヤ管理で「非常に厳しかった」と認めた。とくに彼のオープニングスティントでは、ダブルスティントを実行する場面もあった。 「我々はダブルスティントを実行し、実際は厳しかったがそれでもなんとかしようとしたんだ」 「しかし、前の7号車は飛ぶようなハイペースで、タイヤのデグラデーションも小さかったようだ。対して僕は崖から落ちていくように厳しい状況に陥っていた。とくに2番目のスティントでは、1周あたり2~3秒遅れていたように思う」 「だからこそ、彼らに問題があったのは残念で仕方ない。しかし、僕たちはトラブルのないレースができたので、とても満足しているよ。クルーとしてのミスはなにひとつなかった」 [オートスポーツweb 2024年07月15日]