東芝、少量の画像で産業用画像領域でのAIを実現する新技術を開発
武口氏は、「『ここまで識別率が高まればAIを活用したい』と考える現場が増え、『少ないデータでもここまでの識別率が上がるなら、もう少しデータを集めて精度を高めてみよう』という動きにつながることを期待している。データ数の不足を理由にAI導入にためらわれていたお客さまに貢献できる」と述べる。 デロイト トーマツ ミック経済研究所によると、AIを活用した画像認識ソリューション市場の規模は、国内では2022年度に315億円となり、その後も年平均成長率16.7%で推移。2027年度には680億円に達することが見込まれている。画像認識ソリューョンの用途は多岐に渡り、診断補助や類似画像検索、設備保守、不良品検出、人流解析、安全作業分析などに応用されている。 今回の技術では、具体的な用途として、例えば、半導体製品の不良種別を評価する品質検査などを見込んでいる。半導体製品の開発工程で用いられるウェハー画像などは、大量の画像データを収集することが難しい。画像解析AIによって不良種別を推定し、不良種別と各製造工程の処理履歴を対応付けることで不良原因を特定し、歩留まりの向上や生産性向上につなげることができる。 東芝グループの半導体工場で実証を行う見通しであるほか、少数の画像で自動検査ラインを立ち上げたい工場、少数の生体画像から病気の有無を判別したい医師や医用機器メーカー、少数の顕微鏡画像で自動識別機能を実現したい医薬品メーカーや化粧品メーカーなどでの利用を想定している。 東芝 研究開発センター 知能化システム研究所アナリティクスAIラボラトリー エキスパートの瀧本崇博氏は、「AIを使って欠陥を検出したいがデータが少なく困っている企業に刺さる技術になる」とコメント。同スペシャリストの笹谷典太氏は、「これまでのAI活用は、数万枚のデータがあることを前提としており、データが少ない領域では、AIに興味があっても、論文を読んで導入を諦めていたケースがあった。1000枚以下の少ないデータ量でもAIが活用できる道筋を提示できる。また、新たな領域に対しても、迅速にAIを導入できるため、現場で試行錯誤できる回数を増やすこともできる」と新技術のメリットを訴求した。 東芝は、今回発表したように画像識別タスクに適用するほか、今後は物体検出やセグメンテーションといった画像解析タスクにも適用可能だと説明。また、東芝デジタルソリューション(TDSL)と連携し、東芝グループ内での実証を通じてさらなる精度向上を図り、早期の実用化を目指すとしている。