「コスト」から「バリュー」へ、なぜフェーズフリーな防災商品が売れるのか?
■ ビジネスチャンスとしてのフェーズフリー 世の中のありとあらゆる商品やサービスは、フェーズフリーになる可能性を秘めています。先ほど紹介した「脱出ハンマー付きシガーソケットUSBカーチャージャー」も、もともとはカーチャージャーです。 防災商品ではありません。けれどもフェーズフリーな商品にしたことで、他の商品との差別化が可能になり、売れるようになりました。つまりフェーズフリーは、災害という課題を解決するための手段というだけでなく、あらゆるビジネスやサービスにとっての「ビジネスチャンス」でもあるのです。それはさらに言えば、災害対策に取り組むプレイヤーが大幅に増えるということでもあります。 また、便宜上「ビジネスチャンス」と表現しましたが、フェーズフリーを採用することで高い支持を集める可能性があるのは、狭義の「ビジネス」だけではありません。たとえば自治体が何か新しい公共施設を作ろうとしたとします。 その際に、「日常時しか役に立たない施設」と、「非常時にしか役に立たない施設」、そして「日常時にも非常時にも役に立つ施設」の3つがあったとして、どれが一番住民の支持を得ることができるでしょうか? ほかにも、フェーズフリーな政策や、フェーズフリーな教育、フェーズフリーな医療など。脆弱性があらゆる箇所に潜んでいる以上、裏を返せば、あらゆるものがフェーズフリーになる可能性を秘めているともいえます。 もしあなたが担当する商品やサービスをフェーズフリーなものに変えるとしたら、どんなことが可能でしょう。具体的なアイデアの作り方は第4章で紹介しますが、自分の考えたアイデアが多くの支持を集め、世の中に広がり、さらに非常時には人々の命を守ることができると想像すると、ワクワクしてきませんか? そして、そうやって日常の暮らしのすみずみにまでフェーズフリーが浸透すれば、知らず知らずの間に社会の脆弱性は小さくなっていきます。フェーズフリーは、ビジネスをより支持されるものに成長させながら、災害を解決していくことが可能となる概念なのです。
佐藤 唯行