低速走行のハイテク「パーソナルモビリティー」実用化へ加速 普及への課題とは
低速で走る電動の自転車、車いす、キックボードなど「パーソナルモビリティー」と呼ばれる超小型の乗り物が、自動運転などの最新技術を搭載して乗りやすい形に進化し、実用化の動きが加速している。高齢化を背景に電車の駅やバス停から目的地までをつなぐ短距離の移動手段として期待される。自動車や歩行者との共存に向けた安全面の課題をクリアし、普及するのか。 【表でみる】国内で開発されている主な「パーソナルモビリティー」 「歩き疲れたときにこの乗り物があれば、とても便利ですね」 5月22日、神戸市中心部の商店街「神戸三宮センター街」を買い物に訪れた大阪市在住の女性(27)がそう語った。 女性は、関西電力子会社のゲキダンイイノ(大阪市)が開発した3人乗り自動走行のパーソナルモビリティー「iino(イイノ)」の実証実験に参加。最高時速3・5キロで自動走行し、センサーで人や障害物を検知して減速・停止するイイノの乗り心地を体験した。 モビリティーは「乗り物」を意味する英語。パーソナルモビリティーは一般に低速での近距離移動を想定した電動の乗り物をいい、多くは1~2人での使用を想定。国は1人乗り電気自動車(EV)など車やバイクを運転する感覚で乗るものを含め「超小型モビリティー」と称している。 パーソナルモビリティーは相次ぎ開発されている。WHILL(ウィル、東京)の自動運転による車いす型モビリティーは決められたルートを走行し、目的地で人を降ろした後は自動で所定位置に戻る。羽田空港や病院で導入されている。 ホンダが研究開発している1人乗りモビリティー「UNI-ONE(ユニワン)」は、センサーや車輪に独自技術を搭載し、両手を使わずに座ったままの体重移動だけで全方位へ移動できる。 パーソナルモビリティーが公道で走るには法律上の位置づけが必要だ。イイノやウィルの車いす型モビリティーは時速6キロ以下であるため、道路交通法上、「歩行者」と同じ扱いで歩道を走れる。電動キックボードは昨年の道交法改正で「特定小型原動機付自転車」の一つとされ、車道を走れるようになった。 普及はこれからだ。市場調査会社のモニタス(東京)が昨年5月に首都圏の2400人を対象に調査したところ、マイクロモビリティー(パーソナルモビリティー)に乗ったことがある人は16%、乗ったことがない人は84・0%だった。