「小学生のわが子には大好きな仕事と胸を張れる」日本初のインティマシー・コーディネーター浅田智穂 子役に対する特別な思いも
■「お母さんは好きな仕事をしているんだよ」と伝える ── 現在、小学校高学年の女の子のお母さんでもありますが、育児と仕事との両立で工夫していることはありますか。 浅田さん:自分が仕事と育児を両立できていると思ったことは実は一度もなくて。子どもに負担をかけまくっていると思っています。夫婦ともに時間が不規則な仕事をしているので、遅い時間までどこかに預かってもらったり、友人の家にお泊まりに行かせてもらったりすることもあります。
彼女は3歳からそんな生活で、最初は普通に楽しみで友人の家にお泊まりに行っていたんです。でも、どこかのタイミングで「私は預けられてるんだ」とわかったようで。それで「行きたくない」と言われたわけではなく、両親のことを理解してくれて、今でも友人宅で楽しく過ごしています。どうして預かってもらっているのか、ということは理解してもらおうとは心がけているので、通じているのかもしれません。 「お父さんとお母さんは、大好きな仕事をしている。それを理解してほしいし、あなたが好きなことを頑張るんだったらいくらでも応援する」ということをいつも伝えています。
── 娘さんにご自身のお仕事についてはどうお話していますか? 浅田さん:どのタイミングできちんと話そうかと思っていたんですが、ネットで調べたりして、なんとなくは知っているみたいです。本当の意味はわかっていなくても「インティマシー・コーディネーターとは~」とか言い出したりするので(笑)。いちおう、私から彼女には「私は映画や舞台のお仕事をしていて、俳優さんたちが嫌なことをさせられないように、不安がなくお芝居ができるような仕事をしてるんだ」ぐらいの説明にとどめてあります。
とはいえ、高学年ですしそろそろ性教育も始まります。性教育のわかりやすい本は本棚に入っているので、よきタイミングで話そうかと。改まって伝えると、彼女も緊張してしまうかもしれませんね(笑)。 ── 今年3月から後進の育成もスタートされたそうですね。国内で活動しているインティマシー・コーディネーターはわずか2名だそうですが、人材不足を感じていますか。 浅田さん:そこが難しいところで…私は基本的にスケジュールを理由に仕事を断ったことがないんです。すごく大変な仕事だけれど、なんだかんだで2人でこなせている状況があります。とはいえ、今後需要は確実に増えてくる仕事だとは思います。私は教えるという立場をとった以上、その人たちがトレーニングを受けて資格を取ったら、ある程度安定して働けるようにしないといけないという思いでいます。
PROFILE 浅田智穂さん あさだ・ちほ。1998年ノースカロライナ州立芸術大学卒業。帰国後は通訳として従事。2020年、IPAにてインティマシー・コーディネーター養成プログラムを修了。Netflix映画『彼女』で日本初のインティマシー・コーディネーターとして作品に参加した。 取材・文・撮影/市岡ひかり
市岡ひかり