「小学生のわが子には大好きな仕事と胸を張れる」日本初のインティマシー・コーディネーター浅田智穂 子役に対する特別な思いも
インティマシー・コーディネーターとして、映画やドラマなどの撮影現場をサポートする浅田智穂さん。性暴力など心理的負担が大きいシーンで、俳優の心を守るために一番大切にしていることがあるといいます。それはわが子に対する思いにも通じるものでした。(全2回中の2回) 【写真】一児の母の顔ももつインティマシー・コーディネーターの浅田智穂さん。娘さんと一緒に過ごす時間に欠かせないアイテムが意外!(全7枚)
■「余計なことはしない」細やかな配慮で俳優を守る ── ドラマ『大奥』(NHK)で、実子に性加害をする役を演じた高嶋政伸さんのエッセイが話題になりました。このなかで、「現場では、仮にその場に女優さんがいなくても、『レイプ』といった言葉を使わないようにしよう」と話されたというエピソードが印象的でした。
浅田さん:シーンの内容はみんなわかっているし、あえてその言葉を使う必要はないですよね。決して耳障りのいい言葉ではないし、それを当時10代だった彼女に聞かせるのはよくないなと思ったんです。「レイプのシーン」とわざわざ言わなくても、普通に「シーン58」と伝えればすむ話。必要のないことはしなくていい、というのは、私のなかで俳優を守るための策として思いついたことでした。 ── こうした性的虐待も含め、10代や身成年者が暴力を受けるシーンの撮影には、大人以上に特別な配慮が必要になると思います。
浅田さん:子どものケアについては、私自身もまだ勉強中なんですが、アメリカでは子役に関してはめちゃくちゃ厳しいルールがたくさんあるんです。日本でも「未成年者が参加する撮影は午後8時まで」といったルールがありますが、アメリカでは休憩時間に勉強するための先生がついていたりして。 それを日本にそのまま当てはめるのは難しいなと思いつつも、お芝居に関しては、内容や演出方法含めて、子どもが傷ついてはいけないと思うんですね。たとえば虐待のシーンで、実際に叩くなんてことは絶対にダメ。怒鳴りつけたりするのも、子どもが恐怖心を持ってしまうようなことは控えるべきだと思います。たとえば暴力のシーンなら、役者をそれぞれ別撮りするという方法もとれます。そうやって工夫すれば、演者の子どもができるだけ傷つかないようにできるはずです。