「小学生のわが子には大好きな仕事と胸を張れる」日本初のインティマシー・コーディネーター浅田智穂 子役に対する特別な思いも
あとは撮影内容についても、自殺や不倫など、その年齢の子が知る必要がないことを、あえて知らせる必要はないと思っているんです。たとえば私の娘は今小学校高学年で、おそらく「自殺」という言葉は知っていますが、自殺の方法まで詳しくは知りません。そういうことを、撮影に参加する子どもにあえて伝える必要はないと思っていて。その子たちが、自分の人生の中で学んだり、経験したりすればいいことだから。 ── 最近は不倫を描くドラマに子どもが出演するケースも多いです。
浅田さん:そうですね。離婚されているご家庭のお子さんもいますので、ご両親がなにか理由があって別れた、という事実は知っていてもいいと思う。ただ、不倫とかそういった事実までは、子どもは知る必要はないように思います。 だから撮影でも、子役の子に不倫などについて説明はせず、ただそのシーンだけ演じてもらえればいいと思うんですよ。「お父さんが不倫して出ていってしまって、寂しいから僕は泣いている」ではなく、なにか悲しいことを想像して泣くだけでいいんじゃないかなって。ただ、それを嫌がる監督もいますので、そこはまだせめぎ合いですね。
■現場と考えが違ったら「私は降りるしかない」という覚悟 ── 監督と意見が食い違ってしまうことはやはり多いのでしょうか。 浅田さん:私は仕事をするうえで3つのルールを掲げていて。1つ目は「インティマシーシーンは必ず事前に同意を得る」。2つ目は「性器の露出を避けるために必ず前張り(股間に貼りつけて性器を覆い隠す物体の総称)をつける」。3つ目が、「インティマシーシーンは少人数のクローズドセットで撮影する」。でも、前張りについて、なかには「俳優がつけたくないと言ったら、つけなくていい」という考えの監督もいます。
──前張りについては、つけたがらない俳優もいると聞いたことがあります。 浅田さん:そうなんです。一方で、前張りをつけたがらない俳優がいたことで嫌な思いをしたという話も本当によく聞くので…。共演者がいる場合、1人が「前張りを取りたい」と言ったら、相手は「取りたくない」とは言えないですよね。スタッフへの配慮も考えなくてはなりません。なかには、私のインティマシー・コーディネーターとしての考え方を受け入れられない方もいらっしゃいます。話し合いで解決できないのであれば、私が雇われる側なので降りるしかないです。