「不倫相手をえこひいき」し、妻に職場に乗り込まれた35歳課長の「その後」…「社内恋愛禁止」の会社はどう処分した?
配置転換にも業務上の必要性が認められる
社内恋愛に起因した行為についての現実的な対処方法として、社内恋愛の当事者の両方もしくは片方を現在の職場と違う職場に異動させることがある。(配置転換) 配置転換とは、人事異動の一種で、同じ勤務地内で従業員の所属部署を変更することで、勤務地が変更になる「転勤」も含めて「配置転換」とする場合もある。企業が従業員の勤務地や職務内容を決定、変更する権限のことを「配転命令権」といい、例えば総合職で採用された場合、配置転換を命じられても原則として断ることができないとされる。 しかし、令和6年4月に労働基準法施行規則が改正され、企業は、従業員に対して労働条件通知書等で、採用後の勤務場所の変更の範囲、採用後に従事させる業務内容の変更の範囲の明示をすることが義務化されたし、近年の傾向として、特に遠隔地への転勤は事前に可能かどうかを本人に打診するようになった。企業にとって配転命令権が行使できる従業員であっても以前のように一方的な判断で行うことは少なくなるとみていいだろう。 企業が配転命令権により、社内恋愛を起因とした従業員の配置転換を行う場合、懲戒処分と同じで、合理性や社会通念上相応な理由が求められる。例えば業務に支障がないなど配置転換の必要性がないケースや、配置転換が従業員に著しい不利益を与えるケースなどは、決定が無効になる可能性が高く、中には人事的に嫌がらせを受けたとして従業員から損害賠償を請求されることもある。
A沢さんは課長を続けられるのか
前編記事で詳細を記したA沢さんの場合だが、彼がB中さんと社内恋愛したことで、次の点が問題行為にあげられる。 (1)B中さんを主任に昇格させたことは、状況からしてA沢さんの私情が入っていたと言わざる得ないこと (2)(1)の扱いによって他のメンバーのモチベーションが下がり、販促イベントをしないなど、将来的に業績ダウンに繋がる可能性があること (3)部下と不倫した上司の下で働きたくないとメンバー達から申し出を受けていること (4)B中さんが会社を退職したため、新たな人材確保が必要になるなど会社に損失を与えたこと (5)A沢さんの妻が会社に押しかけ騒ぎを起こすことで、一時的だが本人と会社の業務に支障がでたこと 以上からして、懲戒処分をするかどうかは会社の考え次第だが、現状ではA沢さんが営業2課長の職務を続けることは難しく、配置転換される可能性は高いだろう。