「不倫相手をえこひいき」し、妻に職場に乗り込まれた35歳課長の「その後」…「社内恋愛禁止」の会社はどう処分した?
就業規則に明記があれば社内恋愛を理由とした処分はできるのか
恋愛をすること自体は会社の業務とは関係なく、あくまでも私的なものであるため、原則会社が干渉することはできない。 *参考:憲法13条「公共の福祉に反しないかぎり、国民は個人の自由と幸福を追求する権利をもつ」 従業員は就業規則を守る必要があるが、憲法、民法、労働基準法など法律の規定が、従業員にとって有利な場合は、会社の就業規則より法律が優先する。社内恋愛の場合、上記で示した憲法の条文などにより、就業規則に社内恋愛を禁止する規定があっても、そのことを理由にして従業員を懲戒処分にすることはできないとされる。 では、「社内恋愛を禁止しても処分ができないのであれば、就業規則に定める意味がない」と考えるかも知れないが、そんなことはない。従業員に対する抑止力が働くことで、労務管理上のリスクヘッジとしては有効である。 就業規則を作成、変更後は労働基準監督署への届出が必要だが、就業規則を労働基準監督署が受理するのは「就業規則の届出義務」(労働基準法89条)を会社が履行していることを確認するためであり、就業規則の内容をひとつひとつ吟味するわけではない。従って「就業規則を受理されたから社内恋愛禁止の規定が有効になる」のではないことに注意したい。
社内恋愛に対する処分が認められる場合
社内恋愛を理由に懲戒処分することができなくても、その行為によって、会社に明らかな悪影響や損失が出ているとの立証があれば、会社は当該従業員を懲戒処分にすることが可能である。 会社に明らかな悪影響や損失をもたらす行為とは、「人事上の公私混同」「恋愛相手の退職」「職場の生産性の低下」「会社の評判や社会的地位の低下」など、客観的に合理的な理由があり、かつ懲戒処分が社会通念上相当であるとする行為が該当する。逆に社内恋愛により職場の風紀・秩序を乱した場合でも、会社に対する明らかな悪影響や損失が立証できなければ、処分を行っても無効になる。 更に懲戒処分をする場合には、処分の種類(けん責、懲戒解雇など)と処分に該当する行為などを就業規則に明記しなければならず、明記が無い場合は原則処分は無効になることにも留意したい。