もっと考察『光る君へ』「なぜ『道綱の母』なの?歴史に残る人物なのに名前がわからないって!」平安初心者の夫に「名前の感覚」について語ってみた(特別編2)
あきこだらけ問題
「内裏での勤務経験がないなら、倫子(黒木華)もドラマの中だけでの名前かね」 「源倫子は史料に残ってる名です。彼女は官位を朝廷からもらって記録されている人」 「へえ、女性でも官位を」 「中宮・彰子(見上愛)の母として、その前に女院・詮子(吉田羊)を自分の屋敷でお世話したことで官位を受けまして」 「そう!それ! その『あきこ』!」 ハンドルを握る夫の大きな声に、またびっくりした。 「なんだなんだ、なんですの」 「あきこだらけ問題だよ。『光る君へ』は『あきこ』だらけだ。ありゃ一体どういうわけ」 「道長(柄本佑)の姉の詮子、道長の妻の明子(瀧内公美)、道長の娘の彰子……皆あきこだね」 「特に娘の彰子。道長のもう一人の妻である明子と同じ読みなのに、嫡妻の倫子は自分が生んだ娘にその名前をつけられて気にしなかったのか。夫・道長にそんなことをされて、嫉妬の炎メラメラにならなかったのか?」 「『あきこ』はドラマの中での呼び方で、彼女たちの名は史料に漢字で記されているものの、読み方まではわからないので。本当は彰子は『あきこ』じゃなかったかもしれない」 「ルビ振ってないんだ…」 「百科事典に載っている読みで詮子を『せんし』、明子は『めいし』、彰子を『しょうし』と呼ぶとドラマのセリフとしては視聴者に違和感を抱かせてしまうから、訓読みで統一したんじゃないかな。私は中宮・定子(ちゅうぐう・ていし)中宮・彰子(ちゅうぐう・しょうし)と覚えたから、ドラマでのさだこ、あきこ呼びに最初は馴染まなかったけど」 「なるほどねえ」 「ちなみに明子は盛明親王の養女になったので皇籍に名が残り、彰子は入内して官位を受け、名が記された」
子どもたちの名前
高速道路情報掲示板に「渋滞を抜けるまであと2㎞」と表示されている。カーナビアプリでも、このあたりの道路は渋滞を示して真っ赤っかだ。しかし、もう少し先は正常に流れているらしい。目にも涼やかな青色表示になっている。渋滞を抜けるまであとちょっと。 「ていし、しょうしかあ。家族の間で娘を呼ぶときにちょっと呼びにくいな」 「成人するまで……裳着の儀式までは長女を『大姫』とか『一の姫』、次女ら妹を『乙姫』や『二の君』、皇女なら『女一の宮』と呼んでいたそうなので」 「乙姫?」 「古代、姉を『兄姫(えひめ)』妹を『弟姫(おとひめ)』としたことから来ているとか」 「ほお。浦島太郎の竜宮城にいたのは次女ってことなのかね。長女はどこにいたんだ」 「それは知らんけど。で、成人して正式な名をつけられる……この辺は、男性と同じかな。倫子の長男の田鶴(たづ)が元服して頼通に、明子の長男の巌君は頼宗になるしね」 「女の子が長女を表す『大姫』とか『一の姫』なのに、男の子は幼名がついてるんだな。幼くても、女の子は名前で呼ぶのは避けたってことか」 「男の子も幼名はあるものの普段は『太郎君(たろうぎみ)』『二郎君(じろうぎみ)』とか呼ばれたんだろうけど……ドラマでも三男の道長は『三郎」と名乗っているし。女の子の場合は本当の名を呼ぶことを避けたのか、残ってないだけなのか。ただ、女の子が幼い時から名づけられていたらしい記録はあるの」 「ほお」 「藤原千古……千に古と書いて『ふじわらのちふる』或いは『ふじわらのちこ』」 「チコ!? チコちゃん!?」 「読みがチコかどうかは定かじゃないんだけども……例によって、ルビが振ってあるわけではないので。ただ、この女性を心から愛した親御さんによって日記に書かれているんです」 「日記か。『光る君へ』でも大活躍中の、あの時代の日記」 「そう。この千古の父、日記の主は藤原実資です。『小右記』に彼女の名前がある」 「実資!『小右記』! 本当になんでも日記に書いてるな、あの人!」
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