そしてマツダだけが残った 誕生35周年を迎えた「ロードスター」とそれに挑んだモデルたち
フォロワーの登場は1995年から
NAロードスターの成功を横目に開発されたであろうモデルが登場するのは1995年。この年にイギリスから「MGF」、イタリアから「フィアット・バルケッタ」がデビューする。前者はミドシップ、後者はFFと駆動方式こそNAとは違えども、どちらも全長4m未満のボディーに1.8リッター前後の直4エンジンを搭載したライトウェイトスポーツだった。 翌1996年にはドイツから「メルセデス・ベンツSLK」と「BMW Z3」、そして「ポルシェ・ボクスター」がそろってデビューする。電動開閉式メタルトップを備えたSLK、オーソドックスなロードスターのZ3、フラット6ユニットをミドシップしたボクスター、いずれも性能的にも価格的にもNAロードスターと直接は競合しない。とはいえ各社のラインナップに長らく不在だった、あるいは初となるエントリークラスのオープン2座モデルだった。 1999年には日本で「トヨタMR-S」と「ホンダS2000」が発売された。前述したように“ミドシップ・ラナバウト”とうたって誕生した初代MR2は、2代目に進化するにあたってボディーサイズ、エンジンともに拡大してリアルスポーツの方向にかじを切った。だがその後継となるMR-S(海外ではMR2の名を継承していた)はサイズを縮小してオープン化、ライトウェイトスポーツに方向転換したのだ。いっぽうS2000は、ホンダとしては「S800」以来およそ30年ぶりとなるFRのオープンスポーツだった。 洋の東西を問わず、こうしたモデルの商品企画に際してNAロードスターの成功が影響を与えたであろうことは想像に難くない。言い換えれば、1990年代の世界的なオープン2シーターの隆盛はNAロードスターが創出したと言っても過言ではないのである。
さまざまなフォロワーのその後
NAロードスターは43万台以上がつくられた後、1998年に「マツダ・ロードスター」に改称した2代目NB型に世代交代。2000年には累計生産53万台以上を達成し、“世界で最も多く生産された小型オープン2座スポーツカー”に認定された。その後2005年に3代目のNC型、2015年に4代目のND型に進化し、2016年には累計生産100万台を突破。現在も記録を更新し続けている。 いっぽうフォロワーはどうなったかというと、フィアット・バルケッタは2005年に生産終了。MGFは2002年にマイナーチェンジして「MG TF」に改名した後、MGブランドが中国資本になるなどの紆余(うよ)曲折を経て2011年に生産終了。日本勢のトヨタMR-Sは2007年に、ホンダS2000も2009年に生産終了。いずれも基本的には1代限りでモデルが消滅している。 ちなみにこれらの累計生産台数がどれくらいだったのかというと、バルケッタが5万8000台弱、MGF/MG TFが11万7000台弱、MR-Sが7万8000台弱、S2000が11万台以上。マツダ・ロードスターはまさにケタ違いだったのである。 ドイツ勢はメルセデスのSLKが2004年に2代目、2011年に3代目となった後、2016年に「SLC」と改名したが2020年に生産終了。BMW Z3は2002年に上級移行した「Z4」に発展し、今は2019年にデビューした3代目が現役。ポルシェ・ボクスターは2018年以来の4代目となる「718ボクスター」となっている。マツダ・ロードスターとは戦う土俵が異なるが、BMWとポルシェは健在というわけだが、双方ともNAロードスターに触発されたのが誕生のきっかけとはいえ、一過性のブームではない独自の市場を確立した結果だろう。 そのほか遅れてきたフォロワーとして、NCロードスター時代の2006年にアメリカから「ポンティアック・ソルスティスGXP」が登場している。本国の「サターン・スカイ」のほか欧州では「オペルGT」、韓国では「大宇G2X」という兄弟車を持つGMからの刺客だったが、GMの経営破綻もあり2010年に生産終了。ポンティアックとサターンの両ブランドも消滅してしまった。