年収と手取りの違いとは?手取りの計算方法や、収入アップのコツを解説【社労士監修】
年収別・手取り額のシミュレーション
年収が同じでも、扶養家族の人数や、適用される所得控除で手取りの金額は異なります。一般的な会社員の場合、社会保険料や税金を差し引かれて手取りとなるのは、額面年収のおおよそ70%~80%と言われています。それに沿って年収別の手取りの目安を算出したものが下の表になります。 年収 | 手取りの目安 300万円 | 210万円~240万円 400万円 | 280万円~320万円 500万円 | 350万円~400万円 600万円 | 420万円~480万円 700万円 | 490万円~560万円 800万円 | 560万円~640万円 900万円 | 630万円~720万円
年収から手取りを計算する方法
もう少し正確に手取りを計算するには、年収から社会保険料を差し引き、それを元に税金を計算して差し引きます。 年収-【社会保険料(厚生年金+健康保険+介護保険+雇用保険)】-【税金(所得税+住民税)】=手取り ここでは、年収から引かれるお金の計算方法について解説しながら、「40歳・月収50万円・年収600万円(賞与なし)・東京で一人暮らし」を想定して、モデルケースをご紹介しましょう。 ◆厚生年金保険料 厚生年金保険料は、給与や賞与の金額をもとに「標準報酬月額」と「標準賞与額」を導きだし、その金額に現在の保険料率18.3%をかけて算出します。保険料は事業主と折半するので、半分の9.15%をかけた金額が自己負担額となります。 厚生年金保険料の自己負担 ・毎月の給与から天引きされる保険料額=標準報酬月額×厚生年金の保険料率(9.15%) ・賞与から天引きされる保険料額=標準賞与額×厚生年金の保険料率(9.15%) 標準報酬月額や標準賞与額は、被保険者が受け取る給与や賞与を一定の幅で区分した金額のことですが、概算する場合は、おおよその月収×9.15%で計算すればいいでしょう。 ●月収50万円・年収600万円(賞与なし)の場合→毎月の保険料は45,750円、年間549,000円 ◆健康保険料 健康保険料も、平均報酬月額×保険料率で算出できますが、保険料率は加入している健康保険の種類や都道府県で異なります。「全国健康保険協会(協会けんぽ)」東京都の場合は、健康保険料の保険料率が10%、事業主と折半した5%が自己負担額となります。 健康保険料の自己負担 ・毎月の給与から天引きされる保険料額=標準報酬月額×保険料率(5%) ●月収50万円・年収600万円(賞与なし)の場合→毎月の保険料は25,000円、年間で300,000円 ◆介護保険料 介護保険料(40歳~64歳まで)も、健康保険の種類によって保険料率が異なります。「全国健康保険協会(協会けんぽ)」東京都の場合は1.82%で、その半分の0.91%が自己負担額となります。 介護保険料の自己負担額 ・毎月の給与から天引きされる保険料額=標準報酬月額×保険料率(0.91%) ●40歳・月収50万円・年収600万円(賞与なし)の場合→毎月の保険料は4,550円、年間で54,600円 ◆雇用保険料 雇用保険料率は年度や業種で異なります。令和5年度の「一般の事業」(農林水産・清酒製造・建設を除く)では、保険料率は1.55%、うち事業主が0.95%を負担し、実際に引かれる金額は0.6%となります。 雇用保険料の自己負担額(令和5年度、一般の事業の場合) ・毎月の給与から天引きされる保険料額=標準報酬月額×保険料率(0.6%) ●40歳・月収50万円・年収600万円(賞与なし)の場合→毎月の保険料は3,000円、年間で36,000円 ◆所得税 所得税とは、年収から所得控除を差し引いた金額にかかる税金です。企業は、源泉徴収で毎月暫定的な所得税額を給与から天引きし、年末調整で正確な所得税額を精算します。所得税の計算式は以下の通りです。 1. 年収-給与所得控除=給与所得 2. 給与所得-所得控除の合計額=課税所得 3. 課税所得×税率-税率に応じた控除額=所得税 1.で年収から差し引く給与所得控除 年収 | 給与所得控除額 1,625,000円まで | 550,000円 1,625,001円~1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 1,800,001円~3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 3,600,001円~6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 6,600,001円~8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) 2.の所得控除とは「基礎控除」「社会保険料控除」のほか、「医療費控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」「配偶者控除」など15種類あり、一定の要件に当てはまる場合に、その人の所得金額から差し引くことができるものです。 3.の課税所得額に対する税率と、税率に応じた控除額 課税所得額 | 税率 | 控除額 1,000円~1,949,000円まで | 5% | 0円 1,950,000円~3,299,000円まで | 10% | 97,500円 3,300,000円~6,949,000円まで | 20% | 427,500円 6,950,000円~8,999,000円まで | 23% | 636,000円 9,000,000円~17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 18,000,000円~39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 ●月収50万円・年収600万円(賞与なし)・家族なし・税額控除なしの場合 6,000,000円(年収)-(6,000,000円×20%+440,000円)=4,360,000円(給与所得) 4,360,000円(給与所得)-(基礎控除480,000円+厚生年金保険料549,000円+健康保険料300,000+介護保険料54,600+雇用保険料36,000)=2,940,400円(課税所得) 2,940,400円(課税所得)×10%-97,500円=196,540円(所得税) ◆住民税 住民税は1月1日時点で住民票があった都道府県・市区町村に払う税金で、前年の所得によって決まった額を翌年6月から均等割りして納めます。東京都港区を例に、前年の所得も同じと仮定して、下の計算式で計算してみましょう。 1. 年収-給与所得控除=給与所得 2. 給与所得-所得控除の合計額=課税所得 3. 課税所得×住民税の税率+均等割額=住民税 ●月収50万円・年収600万円(賞与なし)・東京都に一人暮らしの場合 6,000,000円(年収)-(6,000,000円×20%+440,000円)=4,360,000円(給与所得) 4,360,000円(給与所得)-(基礎控除430,000円+厚生年金保険料549,000円+健康保険料300,000円+介護保険料54,600円+雇用保険料36,000円)= 2,990,400円(課税所得) 2,990,400円(課税所得)×10%+5,000円(均等割額/東京都の場合)=304,040 ここまでの計算で、モデルケースは以下となりました。 ●40歳・月収50万円・年収600万円(賞与なし)・東京都に一人暮らしの場合 年収…6,000,000円 □年収から差し引かれる額 厚生年金保険料…549,000円 健康保険料…300,000円 介護保険料…54,600円 雇用保険料…36,000円 所得税…196,540円 住民税…304,040円 手取り…4,559,820円