混迷を深める世界情勢、いまこそパンダが必要 「パンダ外交」も展開された“最高の外交官”
第2次トランプ政権の誕生など、混迷を深める世界情勢。いまこそ国際社会の協調と外交努力が必要とされている。 AERA2024年12月30日-2025年1月6日合併号より。 【写真】初公開時にシンシンに引きずられるシャンシャン * * * 1972年10月28日──。日航特別機で羽田空港に、2頭のジャイアントパンダが到着した。 前月、田中角栄が現職の内閣総理大臣として中華人民共和国を初めて訪問、周恩来と握手を交わし、日中共同声明に調印。ここで長らく断交状態にあった日本と中国の国交が回復した。この日中国交正常化を記念し、友好の証しとして中国から贈られたのがジャイアントパンダの「カンカン(康康、オス)」と「ランラン(蘭蘭、メス)」だ。 2頭の愛らしい挙動が連日報道され、またたくまに日本国中でパンダブームが巻き起こる。訪欧の際、ロンドン動物園でパンダを観、ファンになった昭和天皇と香淳皇后も、翌73年に上野動物園でカンカン・ランランと対面した。 その後、82年には日中国交正常化10周年を記念してフェイフェイ(飛飛、オス)が上野動物園に到着、86年、ホァンホァン(歓歓、メス)とのあいだにトントン(童童、メス)が誕生。2011年には、リーリー(力力、オス)とシンシン(真真、メス)のペアが到着、17年6月12日にシャンシャン(香香、メス)が生まれる。 パンダは日中友好のシンボルとしてだけでなく、2頭の初来日前から関心は高まっていた。日本初のオールカラー長編アニメ「白蛇伝」ではパンダのキャラクターが登場、70年創刊の女性誌「アンアン」ではパンダがロゴマークに。老若男女問わず愛されるパンダは、しかし単なる動物以上の存在感を、その歴史において示し続け、文学作品の中にも登場している。 ■小説のテーマにも 副業で働くアルバイト先のカラオケ店の同僚・村崎さんから、しばらく海外に行っている間、自宅で飼う小動物たちの世話をしてほしい、と頼まれるモトコ。小動物たちの状態を報告するメールをすると、村崎さんからは謎解きのような画像や、パンダと人類をめぐる歴史がひもとかれる長いメールが届く──。 芥川賞作家でSF作品も手掛ける高山羽根子さんの小説『パンダ・パシフィカ』(2024年10月刊、朝日新聞出版)。この作品は、どのように着想されたのか。