混迷を深める世界情勢、いまこそパンダが必要 「パンダ外交」も展開された“最高の外交官”
「太平洋戦争後の、冷戦の中での私たちが暮らすアジア社会を考えたときに、パンダというのはとてもアイコニックな生きものだな、という気持ちがありました。人が生きものと一緒に暮らす、ということについて都市を中心に書きたいとも思っていました」(高山さん) 「パンダ外交」といわれる外交手法があるように、パンダの愛らしさが人びとに平和な感情をもたらすことは否定できない。 「パンダ外交が始まったのは中華民国時代です。世界大戦や冷戦、香港返還、自然環境の急速な変化など、あらゆる要素の激しい変動の中心に、唐突にあの白黒の、世界中の人たちがかわいいと感じる丸々した生きものがいる、というのがどこかコミカルで、社会のバグという感じがします」(高山さん) ■未来にも生きていく 「最高の外交官」として、世界を股にかけ活躍する希少動物。パンダはこれからも愛され続けるのだろうか。 「23年、四川省の成都という都市を訪れたのですが、街の中は最新の技術に彩られながら、あちこちにおびただしいほどパンダのイメージがあふれていて、きっとこんなふうに未来にもこのアイコンは生きていくんだろうな、と思いました。過去の映像記録を見たときに、白黒テレビに映る特徴的な巨大動物、というインパクトもあります」(高山さん) (編集部・小柳暁子) ※AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号
小柳暁子