石川県の漆芸文化を絶やさないために。産地を超えた作家や職人たちによる『うるしで紡ぐ未来』展が加賀市美術館で開催中
「石川の漆」の新たな一歩を踏み出した展示会
しかし、洞口さんが山中漆器の作家さんと話し、作品を見ていくにつれ、産地のなかで新しい表現をしようとしている人たちの作品をぜひ、一緒に紹介したいと強く思ったそうです。 「古い文献や記録を踏まえ、伝統の技法を受け継ぎながら、新たな表現をしている方々に出会いました。今回の出展には、山中漆器の人間国宝の川北良造先生をはじめ57点を展示。私たちにとっても山中漆器をあらためて見直すきっかけにもなりました」と、洞口さんは語ってくれます。 90歳になられた川北先生も、〈漆芸アート集団 彦十蒔絵〉の作品をご覧になり、「これすごいね、どうやってつくるんだろう?」と、好奇心を持って見られていたとか。新しい技法を知ろうとする欲求にものづくりの真髄を見た気がします。大変な状況のなか、開催にこぎつけた『うるしで紡ぐ未来』展は、産地を超え、お互いに刺激をしあいながら、職人さんたちの魂が共鳴しあっているようにも感じます。 「石川の漆ということで新たなページをつくっていけるんじゃないか、という希望を持てた」と語る洞口さんたちのまさに一歩を踏み出した展示会となっています。能登半島地震への支援のひとつとしても、ぜひ、多くの方に漆の作品を見ていただきたいと思いました。 information 〈うるしで紡ぐ未来〉展 住所:石川県加賀市作見町リ1-4 加賀市美術館 会期:2024年 7月27日(土) ~ 9月1日(日) 時間:10:00~18:00(入館は17:30まで) 観覧料:一般500円、高齢者(75歳以上)250円、高校生以下無料・障がい者の方及び付添1名まで無料 休館日:火曜 Web:漆芸アート集団 彦十蒔絵 クラウドファンディング:能登半島地震復興祈念 「漆能」プロジェクト Podcast:「漆チャンネル」 writer profile Naomi Kuroda 黒田 直美 くろだ・なおみ●愛知県生まれ。東京で長年、編集ライターの仕事をしていたが、親の介護を機に愛知県へUターン。現在は東海圏を中心とした伝統工芸や食文化など、地方ならではの取り組みを取材している。食べること、つくることが好きで、現在は陶芸にもはまっている。 【コロカルニュース】とは? 全国各地の時事ネタから面白情報まで。コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。