日本の裁判所が「正義」よりも大事にしているもの…「靴ナメ」に等しい屈従さえも可能にする”ピラミッド型ヒエラルキー”の実態!
「裁判官」という言葉からどんなイメージを思い浮かべるだろうか? ごく普通の市民であれば、少し冷たいけれども公正、中立、誠実で、優秀な人々を想起し、またそのような裁判官によって行われる裁判についても、信頼できると考えているのではないだろうか。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 残念ながら、日本の裁判官、少なくともその多数派はそのような人々ではない。彼らの関心は、端的にいえば「事件処理」に尽きている。とにかく、早く、そつなく、事件を「処理」しさえすればそれでよい。庶民のどうでもいいような紛争などは淡々と処理するに越したことはなく、多少の冤罪事件など特に気にしない。それよりも権力や政治家、大企業等の意向に沿った秩序維持、社会防衛のほうが大切なのだ。 裁判官を33年間務め、多数の著書をもつ大学教授として法学の権威でもある瀬木氏が初めて社会に衝撃を与えた名著『絶望の裁判所』 (講談社現代新書)から、「民を愚かに保ち続け、支配し続ける」ことに固執する日本の裁判所の恐ろしい実態をお届けしていこう。 『絶望の裁判所』 連載第26回 『「学者たちも認めない」“異例”の「学者枠」…最高裁判事任命の事例が示す「都合のいい人事」とは』より続く
事務総局中心体制──上命下服、上意下達のヒエラルキー
日本の裁判所の最も目立った特徴とは何か?それは、明らかに、事務総局中心体制であり、それに基づく、上命下服、上意下達のピラミッド型ヒエラルキーである。 まず、このピラミッド型ヒエラルキーの実態について簡単に解説しておこう。 頂点には、最高裁長官と14名の最高裁判事がいる(なお、双方を合わせて呼ぶときには最高裁判所裁判官というカテゴリーになるが、この書物では、わかりやすさの観点から、その意味でも「最高裁判事」という言葉を用いている)。 次が高等裁判所長官。全国に8名おり、序列は、東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松の順であると思われる。なお、東京、大阪の高裁長官は、それ以外の高裁長官よりも最高裁入りすることが多い。 次が東京、大阪等の大都市の地家裁所長(同じ場所の地裁は家裁より格が上。なお、裁判所法上は、最高裁判所以外の裁判所の裁判官の種類は、高裁長官、判事、判事補、簡裁判事だけであり、地家裁所長は、司法行政事務の総括者にすぎない)と東京高裁の裁判長、少し後れて大阪高裁の裁判長であろうか。 日本を震撼させた衝撃の名著『絶望の裁判所』から10年。元エリート判事にして法学の権威として知られる瀬木比呂志氏の新作、『現代日本人の法意識』が刊行されます。 「同性婚は認められるべきか?」「共同親権は適切か?」「冤罪を生み続ける『人質司法』はこのままでよいのか?」「死刑制度は許されるのか?」「なぜ、日本の政治制度はこんなにもひどいままなのか?」「なぜ、日本は長期の停滞と混迷から抜け出せないのか?」 これら難問を解き明かす共通の「鍵」は、日本人が意識していない自らの「法意識」にあります。法と社会、理論と実務を知り尽くした瀬木氏が日本人の深層心理に迫ります。