うつ病、パニック障害...心の病をつくる、進化した「人間の想像力」
現代には、うつ病やパニック障害、統合失調症など様々な「心の病」があり、発症となる要因も仕事や人間関係など様々です。誰にでもなるリスクがあるなかで、一体どんな仕組みで私たちは「心の病」を発症してしまうのでしょうか? 精神科専門医で広岡クリニックの理事長を務める広岡清伸氏のお話を、書籍『心の病になった人とその家族が最初に読む本』からご紹介します。 自律神経が整う、簡単なストレッチの方法 ※本稿は、広岡清伸著『心の病になった人とその家族が最初に読む本』(アスコム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
ネガティブとポジティブのせめぎ合いから、心の病が生まれる
さて、心とは何でしょうか? 患者さんにもよく聞かれることですが、私は、「心とは、著しく発達した脳である」と話しています。脳には、恐れや怒り、喜び、悲しみ、驚きといった感情をつくる「情動中枢」や、呼吸や心拍、体温、消化、排尿・排便といった生命活動をコントロールする「自律神経中枢」など、私たちが生きていくために必要なあらゆる機能を支えるシステムがあります。 「心」とそうした脳のシステムは密接に関連しています。このことがよくわかるのが、心の病によって体に現れる症状です。眠れなくなったり、食欲がなくなったり、おなかがゆるくなったり、吐き気がしたり、ふさぎこんだり、心臓が異常にドキドキしたり......。 クリニックを訪れる患者さんも、そうした症状をよく口にします。私たちは、この心を起点にして、ものごとを考えたり、感じたり、誰かと話したりしています。 私は、心には2種類あると考えています。ポジティブな成分である「平常心」と、ネガティブな成分である「不安心」。自分の心の中で、2つのうちどちらが中心にあるかということで、ものごとのとらえかたはまったく変わります。 自己の中心が平常心にあるときは、ものごとをポジティブにとらえたり、考えたりしますが、不安心にあるときはネガティブにとらえたり、考えたりします。どちらが楽しく生きられるかといえば、もちろん平常心です。 だからといって、不安心が不要というわけではありません。自己の中心が平常心にあり続けると、危機管理ができなくなるからです。自己の中心が不安心にあるからこそ、危ないものや怖いものなどに気づき、対策を考えられます。不安心には、私たちが安全に生きるための警報装置の役割があるのです。 「平常心」と「不安心」そのどちらが中心になるのかを決める条件のひとつは、そのときの感情や体調などです。心は情動中枢や自律神経と連動しているため、気持ちが前向きだったり、体調が良かったりすれば自己の中心は平常心にあるし、逆なら不安心にあります。体調がいいときは優しいのに、悪くなると不機嫌になる人がいるのは、そのためです。 そしてもうひとつは、人生における様々な経験を通じて、平常心、不安心のどちらが自分の中で大きくなっているのか、ということです。 極端に差があると、大きいほうが中心になる確率が高くなります。つまり、不安心の成分が大きくなればなるほど、自己の中心が不安心にあることが多くなり、ものごとをネガティブにとらえたり、考えたりすることが多くなるということです。それが、病んでいる心の状態です。