「学童がないから、働けない」どう防ぐ? 日本一小さな村の''保育料ゼロ''学童
池本 また、たとえ「小1の壁」を乗り越えることができても、その後まもなくして「小4の壁」に直面するケースが増えています。 ── 「小4の壁」ですか? 池本 小学3年生までしか学童保育を利用できない自治体もあるのです。また、4年生以上が通えるところでも、学童の活動が低学年の子ども向けだったりして、学年が上がると学童に行くのを嫌がる子もいるのです。 そうして学童をやめてしまうと、子どもの放課後の居場所がなくなってしまうんですね。また、学童の代わりに塾や習い事をする子どもが増える年齢でもありますが、その費用を払うことが難しい家庭もあるわけで、学校外の体験に触れる機会に格差が生まれます。
── 放課後の過ごし方による子どもの教育格差をなくすため、できることはあるのでしょうか? 池本 私はもっと学校と地域が連携し、子どもの「放課後の居場所づくり」をするべきだと思います。現状、放課後の教室や校庭を使うことは教員の負担増が懸念されるほか、「学校は文部科学省」「学童はこども家庭庁」と管轄が異なっているため、学校と学童の間に「壁」があります。ですが、公共の施設をもっと子どものために活用すべきだと思います。 例えば、イギリスでは校庭を緑と遊びの場に改造し、学校の休み時間と放課後、休日に活用することを政府が推奨しているんです。子どもが集まっておしゃべりしたりおやつを食べたりできるベンチやテーブル、校庭改造のプランづくりや遊具づくりに子どもが参加しています。また、木登りや自然を使った遊び、音楽やダンスなど、自由で創造的な遊びの保障が重視されています。道路を一定時間遊び場として使う「プレイストリート」の取り組みも広がっていますね。 また、フィンランドには「公園おばさん」と呼ばれるスタッフが常駐する小屋付きの公園がありました。雨が降っても室内で遊べて、食べたい子にはおやつも出していて、小学生の居場所になっていたんです。 フィンランドでは公共図書館も、放課後の居場所として子どもに人気なのですが、それは飲食もおしゃべりも自由で、コンピュータも自由に使え、コンピューターゲームもできるからなのです。司書の見守りもあり、安心感がありますよね。 このように学童以外の居場所を充実させることで、学童の待機児童が減り、手厚いケアが必要な子どもが確実に学童を利用できるようになると思います。すぐに制度を変えるのは難しくても、発想を変えることで、子どもの放課後は変わっていくはずだと信じています。