日本人は少し太るだけでも「糖尿病」になりやすいって本当? 欧米の食文化と比較
日本や欧米諸国で異なる糖尿病と食文化の関係性 国が違うと、文化も異なるのは当然ですが、異なる地域や文化で根付いた食の習慣は、糖尿病管理にどのような影響を与えるのでしょうか? そこで糖尿病と食文化について、糖尿病内科医の乾恵輔先生(乾小児科内科医院院長)に解説してもらいました。 【図解】20歳以上の性別に見たBMI≧25の割合 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
糖尿病ってどんな病気?糖尿病専門医が解説
編集部: 「糖尿病」とはどんな病気ですか? 乾先生: 糖尿病は「インスリン」というホルモンの働きが不十分となり、ブドウ糖が適切に体内に取り込まれず、血糖値が上昇する病気です。インスリンはすい臓から出るホルモンであり、血糖を一定に保つ働きがあります。 編集部: もう少し詳しく教えてください。 乾先生: 私たちが摂った食事の栄養素の一部は、糖という形で腸から吸収されます。そこから血液の流れに乗って、全身のあらゆる臓器や組織へ送られます。血液中の糖が組織の細胞に取り込まれる時に必要なのがインスリンです。 インスリンの力を借りて取り込まれた糖が、私たちが活動するためのエネルギー源となるのです。インスリンがうまく働かなければ、血中の糖がエネルギーになることはできません。 編集部: どうしてインスリンが機能しなくなるのですか? 乾先生: 原因は2つあります。1つめは「インスリン分泌低下」で、すい臓の機能低下により十分なインスリンを作れなくなってしまう状態です。 そしてもう1つは「インスリン抵抗性」で、インスリンは分泌されているもののインスリンが臓器に対して作用しづらくなり、血糖を臓器に取り込むためにより多くのインスリンを必要とする状態です。 後者は運動不足や食べ過ぎによる肥満、ストレスなどが要因と言われています。
糖尿病は治る?治療法も教えて!
編集部: 率直に、糖尿病は治りますか? 乾先生: 結論からいいますと、現状、糖尿病を完全に治すのは難しいですが、早期に発見し、適切な治療や生活改善などを続けていれば、糖尿病ではない方と同じように天寿を全うすることが可能と言われています。 編集部: 早期発見するためにはどうしたら良いでしょうか? 乾先生: 定期的に健康診断や人間ドックを受けること、そこで糖尿病を指摘されたら放置せず、できるだけ早めに専門医を受診して食生活の見直しや運動習慣づくりなど、生活習慣の改善に取り組むことです。 早期であれば、生活習慣の改善によって血糖値が安定し、将来的な症状の出現を遅らせることができます。 編集部: 糖尿病の治療について教えてください。 乾先生: 糖尿病治療の基本は食事療法と運動療法ですが、それでも血糖コントロールが不十分な場合には飲み薬の使用を開始します。最も大切なのは食生活の見直し、そして減量です。 英国の研究では、糖尿病と診断された40~69歳の867人のうち、追跡期間5年で257人(30%)に糖尿病の寛解が見られたのですが、10%以上の減量を達成していた人は、体重が変化していない人に比べて寛解に至る頻度が77%高いことが報告されています。 日本と英国では異なる点も多いと思いますが、注目すべきデータだと思います。