日本人は少し太るだけでも「糖尿病」になりやすいって本当? 欧米の食文化と比較
日本と海外では食事療法が異なるの? 糖尿病と食文化の関係性
編集部: 日本と海外では、糖尿病を取り巻く現状は異なるのですか? 乾先生: 欧米の糖尿病患者は肥満度を表すBMIが平均で30前後とかなりの肥満ですが、日本の糖尿病患者のBMIは平均25前後で、肥満の一歩手前くらいの人がたくさんいます。 日本人は欧米人よりもインスリン分泌能が低く、日本人の糖尿病にはインスリン分泌低下が強く関与していると報告されています。 日本人を含む東アジア人は、もともとインスリン分泌能が低いことから、加齢や肥満などによりインスリン感受性が低下すると、糖尿病を発症するリスクが上昇しやすいと考えられています。 つまり、日本人はちょっと太っただけでも欧米人に比べて糖尿病になりやすいのです。 編集部: 日本と欧米諸国では、食文化も異なりますしね。 乾先生: 伝統的な日本食は、緑黄色野菜、大豆、魚介類、漬物、海藻、緑茶などを摂ることができるのが特徴で、健康増進に役立つ栄養素を多く摂取できます。 日本人9万人を対象に日本食パターンと死亡リスクとの関連を調べたJPHC研究では、日本食のパターンのスコアの高いグループでは、循環器疾患や心疾患などによる死亡リスクが低い傾向があることがわかりました。 これは、和食によって食物繊維、抗酸化物質、カロテノイド、エイコサペンタエン酸といった健康に有益な栄養素を摂取できるためだと考えられています。 編集部: 日本食はカロリーも低いと言われています。 乾先生: 主要国の食料供給カロリーの国際比較(FAOSTAT)によると、日本の供給カロリー量は、1日あたり2500kcal程度であるのに対して、欧米の主要先進国は3000~3900kcal程度とかなり高値でした。 高カロリーな食生活の影響もあり日本と比べて肥満も非常に多いことがわかっています。 20歳以上のBMIを国際比較した2016年のデータ(NCD-RisC)によると、日本で「肥満」とされるBMI25以上の割合がアメリカでは男女とも60~70%と非常に高く、さらに日本では0.3~0.4%しかいない「高度肥満(BMI35以上)」の割合も約15~20%ととても多いのです。 編集部: 最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。 乾先生: 欧米諸国と比べると日本は1日あたりの摂取カロリーは低く、肥満の比率も低いものの、数十年前と比べると増加傾向にあり、注意が必要です。 さらに日本人は欧米人と比べて肥満度が高くなくても糖尿病になりやすく、ちょっとした体重増加が糖尿病につながりやすい特徴があります。早食いの習慣と脂っこい食品は肥満のリスクを高めることが報告されており、特に気をつけるべきでしょう。 忙しいとどうしてもファーストフードやコンビニ弁当といった食事に偏りがちですが、年齢とともに代謝と運動量が落ち、同じ食事を摂っていてもメタボになりやすい方は多いと思います。 若い頃と比べて体重が増えたと感じる人は、糖尿病や糖尿病予備群の可能性がありますので、一度専門医に相談し、アドバイスをもらうことをお勧めします。いつもの食事を少し見直すことで糖尿病になりにくい習慣ができるといいですね。