進化史の常識覆す?中国新疆で発見、複雑な年輪構造持つ3.7億年前の樹木化石
優れた化石保存状態の謎
今回「Xu等(2017)」によって初めて記載された中国産デボン紀後期の木「シニカウリス」。38点に及ぶ化石標本が知られている中、一番目を見張る事実は、その良質で特別な化石標本の保存状態だろう。何と木の年輪の詳細な構造や組織のタイプまで、幹の断面において観察することができるそうだ。 私が知る限り、前回紹介したような北米から発見される樹木化石の多くが、実は石の塊と化していることが多い。オリジナルの木の構造が岩石にとって変わられていたり、半石炭化(=樹皮や枝葉の後が黒ずんだ状態で化石化)しているものがほとんどだ。文字通り木が何億年という時間を経て岩石化している。そのため木全体や枝葉の大まかな形態やサイズなどは分かるが、木の独特の組織の構造や年輪の模様などを調べることは、すでに失われているためかなり難しい。 木の年輪の成長パターンは、前回紹介したように「木の組織」を植物の幹にもたらしてくれる上で、独特のものがある。しかし化石記録において、大きな幹の存在はデボン紀後期の地層からいくつか知られていたが、具体的な年輪の構造は大きく謎に包まれていた。 さてシニカウリスの斬新な年輪の詳細は次のページにおいてくわしく紹介してみたい。ただ、どうしてこの化石現場から見つかる植物化石は、良質な保存状態を4億年近く経った今日まで保っているのだろうか? 実は化石化の具体的なプロセスにかかわる研究分野を「タフォノミーTaphonomy」という。古生物の研究において非常に重要で興味深いストーリーが潜んでいることが多い。 良質なシニカウリスの化石の良好な保存状態は、このタフォノミーの一環として起こった「ある特殊な化石化の進行環境」の中に秘密が隠されているそうだ。シニカウリスの化石は、当時の火山の噴火によって巻き散った火山灰を多く含む砂岩の地層において発見されている。大量の火山灰はシニカウリスの幹や葉枝を、いわゆる「珪化木(けいかぼく)」の化石として保存されることをもたらした。 この珪化木の化石は非常に「硬質」の標本をもたらすことが多い。ケイ素を含んだ地下水などの影響でオリジナルの木の成分が、二酸化ケイ素(=シリカ)にかわることで起こる。(注:火山灰がなくてもおきることがある)。