進化史の常識覆す?中国新疆で発見、複雑な年輪構造持つ3.7億年前の樹木化石
新属新種の木「シニカウリス」
今回の研究チームは、中国北西部の化石現場から発見された38点に及ぶ標本をもとに、「シニカウリス・リグネッセンス(Xinicaulis lignescens)」という新属新種の樹木を命名した。属名のXinicaulisは中国語で「新しい+幹」を意味する。種の名前lignescensはラテン語で「木組織の生成」を意味する。後述するがこの木の進化上の重要性をうまいこと表している含蓄に富んだ名前といえる。 木の幹のサイズとさまざまな形態上の特徴から、デボン紀末期までに世界各地に栄えた初期種子植物類のアーケオプテリスではなく、最古の樹木として知られるワッツィエザやユースペルマトリスなどを含む「クラドクシロプシッダ類(Cladoxylopsida)」の系統に属すと研究者は結論づけている。(細かい進化系統上の関係は前回の記事でまとめた図を参照)。 ―デボン紀の樹木グループの進化関係図: このクラドクシロプシッダ類は、シダ類の先祖、またはその近縁にあたる絶滅した系統グループと提案されている(前回の記事参照)。ただ現生のシダと比べ、デボン紀後期のものは枝葉の数がかなり少なくかった。 そして、今日、薮の中でよく見かけられるシダをみてみると、(一部の例外をのぞき)ほとんどの種は何メートルもの高さに成長することはない。腰下くらいの高さのものがほとんどで、樹木の陰に隠れるように、こそこそとじめじめした場所に生えている。しかし、どういうわけかデボン紀後期のシダ類の遠い親戚にあたる仲間には、ワッツィエザのように背たけが8メートル近く達するような大きく木の組織を備えたものが出現した。 このシニカウリスの化石標本によると、幹の直径は最大のもので70cm、樹皮の厚さは32mmに達した個体が知られている。完全に保存された木の化石は今のところ発見されていない。そのためシニカウリスの全長は部分化石をもとに推測するしかない。例えば幹の太さを近縁のワッツィエザと、ほぼ同じくらいの高さまで成長したのではないかと考えておいていいだろう。 シニカウリスはこの時代の全ての陸性植物、いや陸生生物にとって、大空をさえぎる非常に異質で、頑丈で、巨大な存在だったはずだ。