「わたしと同じ障がいを持つ人っている?」探し続けた末にたどり着いた「愛すべきありのままの自分」
すっかり、ネガティブなイメージがついてしまった多様性という言葉。ドキュメンタリー『わたしの物語』に触れ、いかに私たちが無意識のうちに、エイブリズム(能力のある人が優れているという考え。障がい者に対する差別と社会的偏見。非障がい者優先主義)の根強い社会に生きていることか、思い知らされる。 ■ 障がい者によるセルフ・ドキュメンタリー 『わたしの物語』は股関節がなく、大腿骨が短いという極めて稀な障がいを持って生まれたイギリス人女性エラ・グレンディニングが同じ障がいのある人をSNSで探し、自分らしい生き方を模索する4年間を自ら記録したセルフ・ドキュメンタリー。 “私と同じような脚の人っている?” SNS上で問いかけを始めた彼女のルックスは多くの人とは違う。 小さな村で両親に愛され、すくすく育っている間はなんの問題もなかった。幼い頃の彼女は明るく元気で、自分と他人を比べることもなかったろう。 ところが小学校に上がると異変が起きる。そこにはたくさんの子どもたちがおり、自分は人と違うことを知る。いじめもあったはずだ。 街に出れば、人々の好奇の目にさらされる。二度見、じろじろ見られることも日常茶飯事。世間からすれば、ごく少数派に属する彼女は自分と同じような姿の人を見たことがない。世界のどこかにはいるのだろうか。
■ マッチングアプリで知り合った、ごく普通のカップル エラは好奇心旺盛な人なのだろう。両腕のタトゥーに鼻ピアスがとてもファッショナブル。マッチングアプリで知り合ったパートナーがいて、そのうち、妊娠が発覚する。 出産するだけでも大変な決心だが、彼女は自然分娩にこだわって、医師を探し求める。撮影クルーは彼女のパートナーであるスコットも撮影しようとするが、彼女は「非障がい者のヒーローを登場させたがっている」と納得しない。障がい者と結ばれた非障がい者は英雄視される。 だが、彼らにしてみれば、自分たちはマッチングアプリで知り合った、ただの一組のカップルに過ぎない。このドキュメンタリーはあくまでもエラ・グレンディニングの物語なのだ。 お腹がどんどん大きくなる中、SNSを通じた人探しはこう着状態に。やがて彼女は自分と似た障がいのある子どもたちが、複数回にわたる大規模な手術を受けている事実を知る。四肢の延長と再建の国際的権威、ドロール・ペイリー医師による治療で、人生が劇的に改善され、車いすも不要になるという。