「あの家を守ってくれ」亡き夫に託された郷里の不動産だが…優しい70代妻が売却に踏み切った、小姑たちの〈まさかの言動〉
夫を亡くした高齢女性は、夫の遺産の一部である、夫の郷里の実家不動産について頭を悩ませていました。亡き夫はずっと家を守ることを希望していましたが、女性と子どもたちには、大きな負担となってしまいます。どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
夫が急逝した悲しみのなか、相続の不安が…
今回の相談者は、70代の専業主婦の山田さんです。5カ月前に亡くなった夫の相続の件で相談があると、筆者の事務所を訪れました。 山田さんの夫は都内の企業を定年退職後、地元企業へ転職し、亡くなる数カ月前まで勤務していました。普段から元気で、とくに変わったところはなかったそうですが、定期健診で病気が発覚。退職して治療に専念したものの、残念な結果になったそうです。 「本当に元気な人で、まさかあんなに早く亡くなるなんて思ってもみませんでした。これから夫婦でゆっくりしようと思っていたのに。正直、まだ心の整理がついていない状態です。でも、相続が心配で…」 そういうと、山田さんはつらそうにうつむきました。 山田さんの夫の財産は、埼玉県の自宅マンションと預金、株などの有価証券のほか、生まれ故郷の長野県の実家もあるそうです。 「夫は亡くなるとき、私と2人の息子たちの目をまっすぐに見て〈本当にありがとう。お父さんは幸せだった〉といったあと〈長野の家を守ってくれ、頼んだぞ…〉といいのこして旅立っていきました…」 山田さんが悩んでいるのは、まさに夫の郷里の実家不動産のことでした。
「ハッキリいって、損しかしていません!」
山田さんの生活拠点は現在の自宅であり、2人いる息子さんも東京にマンションを購入し、妻や子どもたちと暮らしています。 「夫は4人きょうだいの長男で、下には妹が3人います。夫は東京で就職し、生活拠点もずっとこちらでしたが、故郷への思い入れが強く、私たち家族を伴い、しょっちゅう帰郷していました。舅と姑が亡くなったあとは夫が相続して管理し、なにかというと妹たちやいとこたちを集めていました」 山田さんの夫の実家は駅から遠く、建物は古い日本家屋で、価値のあるものではないそうです。 「義妹たちは全員夫から鍵をもらっていて、勝手に出入りしています。でも、光熱費はすべて夫持ちですし、集まったときの支度や後始末はすべて私。親族は、長男の夫が全財産を相続したから当然と思っているようですが、家は古いし、預貯金だって雀の涙。ハッキリいって、損しかしていません…!」 夫を亡くしたときのエピソードから現実的な話に切り替わると、涙をこらえていた山田さんも次第にヒートアップしていきました。