和田秀樹が解説「脳が衰える習慣・活性化する習慣」 試練が訪れやすい高齢者こそ楽天主義を徹底
そういった性質を持つ前頭葉は、「想定外のこと」「予測不可能なこと」が起きたときに、その真価を発揮します。つまり、予期していなかったハプニングなどに対応するとき、人の前頭葉は刺激され、鍛えられるということです。 ですから、変化やハプニングを恐れず、毎日を冒険するつもりで過ごしてみてください。行ったことのない場所に行ってみたり、読んだことのないジャンルの本にトライしてみたり……思い切って新規開拓してみましょう。
ずっと同じところに留まっているのは、いわば「精神的な引きこもり」です。ですから日常のなかに、意図的に想定外のことを増やしてみてください。「自分の予想がつかないこと」は刺激的で心をドキドキさせてくれるものですが、同じように脳も刺激を受けるのです。 変化することは面倒なものですし、安全な場所に留まっていたいと思うのは当たり前です。でも安穏に生きたいと願い、固定化されたルーティンのなかに閉じこもっているばかりでは、脳の若返りのチャンスは得にくくなってしまいます。
そして望まないトラブルが起きたときも、「脳が活性化されるチャンスを得たのだ」と前向きにとらえてください。あなたが予想外の出来事に懸命に対処しようとしているそのとき、脳は大喜びしているはずです。 ■脳を活性化させるための合言葉「まずは試してみよう」 賢さの一つとして、柔軟性を持つことが大切だとお話をしました。 私の老年医学の経験では、こだわりや決めつけが強く、物事を型通りに進めようとする人に比べ、思考が柔軟で、臨機応変に対応できる人は、一般的にボケにくくなることを痛感しています。
「頑固老人」という言葉もあるように、年齢を重ねてきたからこその経験知やプライドによって、つい頑なになってしまったり、何かを決めつけたくなってしまったりすることもあるでしょう。 けれど、「これが絶対正しい」「これ以外は認めない」という強情さは、脳の老化を早めてしまいます。年齢を重ねた今こそ、あらゆるものに関心を持ち、ちょっと歩み寄ってみるような素直さ、度量の大きさを持つことが大切だと思います。 たとえばコンピュータ上で自然な会話が楽しめるAIツール、Chat GPTに関しても、「そんなものは邪道だ」と最初から拒絶するのではなく、「最先端の技術の力を借りて、今できないことができるようになったらいいな」というくらいの柔軟さや好奇心を持って取り入れてみる。そんな姿勢で向き合えば、難解な文章をわかりやすく提示してくれたり、あるいは人生の悩みにも的確な答えをくれたりして、目から鱗が落ちるような思いをするかもしれません。