高速の道路工事で見かける「トラ柄トラック」は人や荷物を運ぶだけじゃない! 人を守る「盾」の役割もあった
トラ柄の車両はさまざまな役割を担っている
高速道路を走っていると、黄色をベースにしたトラ柄などの車両を見かけることがある。これらの多くは、高速道路を運営する高速道路会社(ネクスコ3社・首都高速・阪神高速・本州四国連絡高速)と、その関連会社や業務委託先などが管理しているものだ。 【写真】子どもにもわかりやすい! NEXCOの車両たちがイラストになっていた パトロールのほか、道路の清掃・管理・補修などさまざまな役割を担っているので、車両の種類はじつに多彩である。そのなかに、道路工事・作業の際に車線規制現場に出動しているトラックがあるのだが、これらの車両は資材や人を運ぶだけではなく、ある重大な任務が課せられているのだ。 昨年6月ごろから、高速道路会社の公式SNSやパーキングエリア、サービスエリアなどで、ある衝撃的な動画が流れ始めた。工事や点検などで車線が規制されているところに、走行中の一般車両が突っ込んでくるという事故の様子で、実際に発生したときの映像を使用している。近年、こういった事故が増加傾向にあるため、ドライバーに注意を促そうとしたのわけだ。 規制帯進入事故は以前から発生しているのだが、最近では事故を誘発するとされる新たな原因が生まれている。そのひとつが、「ながら運転」だ。これに対する規制は1999年から開始されたが、スマホの普及で事故の発生に歯止めがかからないこともあって、2019年から厳罰化が実施された。とくに高速道路は走りやすい単調な道が続くため、ついスマホに目をやったり操作をしたりするドライバーがあとを絶たない。
身を挺して作業者の安全を確保している車両も
もうひとつは運転支援装置の過信である。現在、さまざまな運転支援装置が開発されているが、完全自動運転が実用化されているわけではない。ところが、支援装置によっては少々目を離しても、安全に走行できるなどといった誤解があり、つい油断をしてしまうドライバーが散見される。 これらのことから、規制帯への進入事故が増加したといわれているのだ。工事や点検で車線を規制する場合、パイロンを使用して徐々に規制する車線をふさいでいく。その先端部には矢板看板や警告灯(回転灯)などを置いて、視覚的に通行車両を規制していない車線に誘導するわけだ。事故は、これを見落とすことによって発生する。このとき、もしこの規制帯のなかで作業が行われていれば、それは直ちに人命にかかわる事態に陥ってしまう。 規制に使用されるトラ柄などのトラック(作業にかかわるものを除く)には、おもに規制を知らせる電光看板を搭載した看板車と、規制用の資材を載せる資材車がある。これらの多くは中型トラックの平ボディで、概ね作業者の前方(通行車両が来る側)に配置される。これが、規制用トラ柄トラックが看板や資材などを「運ぶ」以外の、重要な任務につながっているのだ。 それは、万が一この場所に通行車両が突っ込んできた場合、このトラックが緩衝装置になるということである。すなわち、身を挺して作業者の安全を確保しているのだ。作業者目線で動画を見ればわかるが、クルマが突っ込んでくると認識してから実際に到達する(事故が発生する)までは、約2秒程度の出来事である。よほどの俊敏さがなければ、回避することは難しい。 こういった危険な作業現場では、トラックが人の安全を守る盾の役割も担っている。なかには、荷台後部に緩衝装置をつけている車両もあるが、それでも事故が起きればダメージは大きい。多くの場合、規制帯付近は時速50km/hの速度規制がかかっているものの、それを守っている通行車両は多くない。自身の安全のためにも規制速度を守り、「ながら運転」は絶対にやめて、規制帯には注意をしながら安全運転を心がけたいものだ。
トラック魂編集部