「超速ラグビー」の肝。麻田一平アシスタントコーチが見るジャパンのSHたち。
エディー・ジョーンズはどんなコーチか。 「凄いと思うのは人を見るところ。グラウンドではもちろん、食事会場でどういうものを食べているかなど、常に選手にアドバイスを与えられる点を探しています」 約9年ぶりに日本代表のヘッドコーチとなった世界的な指導者について聞かれ、こう答えたのは麻田一平。5月の菅平での候補キャンプで、6月23日からは若手の多いJAPAN XVの活動でアシスタントコーチを務める。 上司のジョーンズは、部下の仕事ぶりもよく観察する。選手の体調や状態に変化があれば、S&Cのスタッフに声をかけてトレーニングメニューの再確認を求めるようだ。麻田の証言は続く。 「(選手に)こういうプレーをして欲させて欲しいという部分の要求も、高いです。選手がより成長できるようサポートして欲しいと言われています」 トヨタ自動車ヴェルブリッツ(当時名称)に在籍していた2011年、ワールドカップニュージーランド大会に参戦する日本代表から招集されたことがある(キャップは0)。 2016年に現役を退いてからは、ワールドカップ組織委員会のスタッフ、清水建設江東ブルーシャークスのヘッドコーチを歴任。現在はトヨタ自動車から出向する形で、日本ラグビーフットボール協会に所属する。今年度の20歳以下(U20)日本代表で、アシスタントコーチとしてBKを指導していた。 U20日本代表と日本代表が密に連携を取っていることと両軍のチーム方針により、麻田は5月以降より日本代表側の活動にコミットすることになった。 JAPAN XVでは、自身がプレーしたSHの専門コーチをしている。 「日本全体のSHのレベルは高いと思っています。誰が(主力に)なっても世界に近づけるようなコーチングをしていければ」 ジョーンズの謳う「超速ラグビー」では、接点からの素早い球出しとその際の好判断が肝。SHに課される役割は大きいため、麻田はSH陣と話し合って進歩を促す。 「(いまの日本代表では)『パスが先で、そこへ(受け手が)走る』のではなく、『走るのが先』です。(パスの受け渡しが)相手ディフェンスと接近してできていたら、自分たちのやりたいラグビーが表現できている(証拠だ)と思います」 選手の1分あたりの高強度でのプレー回数を数値化し、ポジションごとに世界トップと日本とのギャップを可視化。その観点によれば、もっともワールドクラスに近づけそうな位置はSHなのではと麻田は言う。 いまの日本代表およびJAPAN XVに選ばれているのは、SH勢最年長でノンキャップの小山大輝、昨秋のワールドカップフランス大会に出た齋藤直人、今年代表デビューの藤原忍。三者のよさについて、麻田はこう述べた。 「小山選手はラグビーのナレッジ(知識)が高く、性格的に明るい。兄貴分みたいな感じです。齋藤選手は共同主将でもあり、リーダーシップを発揮しています。ジャパンが大事にしているものを表現してくれる中心選手です。藤原選手は一番、勢いがある。ボールを動かすスピード、ディフェンスのスピードが強みです。この3人がどう成長するのかが楽しみです」 話をしたのは7月5日。6月29日に東京・秩父宮ラグビー場で10―36と敗れたマオリ・オールブラックスとの再戦を翌日に控えていた。6日のゲームは愛知・豊田スタジアムで18時キックオフ。齋藤が先発し、小山がリザーブに回る。 (文:向風見也)