もし空飛ぶクルマが墜落したら…京都工繊大・東レ、シミュレーション技術開発
京都工芸繊維大学は東レと共同で2026年度末までに、墜落など緊急時の空飛ぶクルマの挙動を示すシミュレーション技術を開発する。東レが炭素繊維複合材開発で培った風洞試験のノウハウを生かし、京都工芸繊維大のシミュレーション技術を実用レベルに高度化する。費用や研究員安全確保などの観点から、実機での空飛ぶクルマ墜落実験は難しい。仮想空間での実験に置き換えることで、空飛ぶクルマの安全性を向上する技術開発を促進する。 京都工芸繊維大の山川勝史教授が開発した、飛行体用仮想実験環境技術「デジタルフライングカー」を高精度化する。東レや研究機関が持つ風洞装置で実機試験し、シミュレーション結果と照合してパラメーター調整や計算条件の適正化を行う。安全な機体設計や、緊急時に人命を守るための技術開発を実験なしでできる環境を整備し、空飛ぶクルマの開発期間短縮や社会実装促進に貢献する。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業の採択を受けており、助成額は最大2億円。 シミュレーションできる空飛ぶクルマの機種も増やす。デジタルフライングカーは電動垂直離着陸航空機(eVTOL)主要3タイプのうち、ベクタードスラストタイプとマルチロータータイプのプロトタイプを開発済み。これら2タイプ向けシミュレーション技術のノウハウを生かし、リフト・クルーズタイプ向け技術を開発する。現在の計算精度は誤差約10%だが、山川教授は「3タイプとも、26年度末までに1%を目指す」と意気込む。 NEDO事業の一環で東レの再委託を受け、日本化薬が空飛ぶクルマ用に衝突回避機能を持つパラシュートを開発する。助成金のうち1100万円を使い、東レの滋賀事業所(大津市)に垂直方向に風を当てる風洞装置を設け、パラシュートの挙動を解析する。風洞装置は対象物に水平方向に風を当てるものが多く、垂直風洞装置は珍しい。