株式に対して約20年ぶりの割安水準になった米国債券、米利下げ前に考える債券ファンドへの投資機会
米9月のFOMC(17-18日)において米国は政策金利を引き下げる見通しだ。利下げ幅については0.25%と0.50%とで見方が分かれるが、利下げにふみきるであろうことは確実視されている。そして、年末に向けて一段と金利を引き下げる方向にある。米国は2022年3月に政策金利の上限を0.25%から0.50%に引き上げて以来、2023年7月に5.50%に引き上げるまで急速な金融引き締めを実施。2023年7月以降、1年余りにわたって上限金利5.5%という高い水準を維持してきた。金融を引き締めてインフレ(物価上昇)を抑えるという政策を大転換し、高金利によって経済成長にブレーキをかけている状況が、徐々にブレーキを緩める動きに変わる。世界最大の金融市場を持つ米国の金融政策の転換は、世界の金融市場全体に影響を及ぼすだろう。投信を保有する投資家は、この変化に対応することを考えなければならない。
過去10年にわたって投信による運用成績が良かったのは、圧倒的に米国株式だった。過去10年間のトータルリターン上位銘柄(ブル・ベア型を除く)は、トップが「野村 世界業種別投資シリーズ(半導体)」で年率27.58%、次に、「(NEXT FUNDS)NASDAQ-100(為替ヘッジなし)連動型上場投信」の22.02%、そして、「米国NASDAQオープンBコース」の20.05%、「netWIN GSテクノロジー株式ファンドB(為替ヘッジなし)」の19.14%、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)」の18.89%など、ウエルスアドバイザーのカテゴリーとしては、「国際株式・北米(為替ヘッジなし)」に属する銘柄が上位を独占する状況だ。
このように成績上位ファンドが米国株に偏っている状況は、投信に投資する投資家の行動に大きく影響を与えている。多くの投資家が、「米国株式に投資していれば間違いはない」という『相場観』、あるいは、『投資の常識』を持っていることだ。現に、投資信託に対する資金の流出入の状況では、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」と「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)のどちらかが月間の流入額のトップを独走し、流入額上位銘柄には「S&P500」や「全米株式」に連動するインデックスファンドが複数入っている。新NISAにおける「オルカン人気」は、「S&P500」など米国株の高パフォーマンスが背景にあることは間違いない。米国株の人気にあやかりたいが、米国株だけでは割高という指摘もあるため、新興国も含めて広く株式に分散投資しようという考え方で「オルカン」が選ばれているのだろう。