五輪で生理に悩んだ元競泳選手が語る いま男女で考えたい10代の月経教育
――生理に関するコミュニケーションの取り方として、指導者や学生アスリートにどんなアドバイスをしていますか? いきなり生理について直接話すのは、双方にとってハードルが高いと思います。ですから、まずはコンディションノートを作ってもらい、そのなかで生理について記入してもらうといいと思います。 例えば、ノートに「月経〇日目」と記入しておけば、わざわざ指導者に口頭で伝える必要はなくなります。指導者側も対面で聞き出さずに、指導中に様子が気になった学生の状況をノートで確認することができます。もちろん、生理が軽い子は「知られたくない」と思う場合もあるでしょう。逆に、生理が重い子は「知ってほしい」と思っている場合もあります。そういった感覚の差に配慮するためにも、間接的なヒアリングをしていくのがいいと考えています。 先日伺った八戸学院光星高校(青森県)ではワークショップを行い、学生たち自身に「生理に関するコミュニケーションをどうしたらいいか」と、考えてもらいました。学生からは、「私が先生に生理のプレゼンをしてみる」「月に1回、月経ミーティングを行う」などといった提案がありました。最初は話すことを躊躇していた子たちも、生理は女性の体にとって当たり前であり、命を宿す体の重要な仕組みだと伝えることで、話してもいいんだという空気になり、議論が活発になりました。
生理を知ることは、広い意味を持つことを伝えたい
――10代が生理について学び、理解を深めていくことの意義とは? 今回の東京オリンピックのビジョンにも、「一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)」という一節があります。男女平等、LGBTQの推進が謳われていますが、相手を理解し思いやることの第一歩は、身体的な差異があることを知ることだと思います。男女平等だからといって、全て形式的に一緒にすることが平等かといえば、そうではないでしょう。 今の若い世代が社会人になる、大切なパートナーと出会う、子供を持ち育てる、そんなとき、互いの体の違いについて考えられれば、皆がより生きやすくなるのではないでしょうか。そんな広い意味も持って、生理の事をお伝えしています。 解説:伊藤華英 競泳オリンピアン/1252プロジェクトリーダー 女性アスリートが抱える「生理×スポーツ」の課題に対し、トップアスリートの経験や医療・教育分野の専門的知見をもって向き合い、教育活動・情報発信をする「1252プロジェクト」を主導している。7月からは、生理について語る若者向け動画コンテンツ「Talk up 1252」の配信を開始。「1252」とは、1年間52週のうち、約12週は生理による不調を感じる期間であることを示している。 監修:東京大学医学部附属病院女性診療科・産科 能瀬さやか