《最短相続の決め手》丁寧に作っておきたい「遺言書」 その“正しい書式”と検認の手続きが不要になる“法務局での保管制度”
手続きが膨大で面倒──相続にはそんなイメージが付きまとうが、簡単に済ませる制度もあり、それらをうまく活用すれば劇的に簡潔になる。そんな「最短相続」を実現するために不可欠なのが「遺言書」だ。
遺言書がないと「遺産分割協議書」を作成し、銀行や不動産の名義変更をする場合に提出しなくてはならない。 東京国際司法書士事務所代表でこれまで相続や借金に関して1万人以上の相談を受けてきた司法書士の鈴木敏弘氏が言う。 「遺産分割協議書は相続人が全員集まり遺産の分け方を決めたうえで、その分け方を書面にするもの。複雑な作業になり、集める書類も多い。遺産分割協議と書類作成だけで数か月かかるケースもあります。 遺言書があれば遺産分割協議書を作成しなくて済むので、必ず書くようにしてください」 銀行口座の解約でも遺言書があれば死亡の事実が分かる戸籍謄本だけで済むなど、相続手続きを簡略化させる「最強の武器」だからこそ、遺言書の作成には最大限の注意を払う必要がある。 書き方を間違えると、かえって相続を長期化させてしまうのだ。
「曖昧な記載」には要注意
特に気をつけたいのは「曖昧な記載」だ。 「たとえば『財産は妻に任せる』といった記載をする人が少なくないのですが、『任せる』は解釈が難しい。妻にすべての財産を相続させるのか、妻が財産を分けるのか判然とせず、遺言書が無効になる可能性があります」(同前) 分け方を明記したとしても、矛盾する内容では無効となる。相続専門の税理士で社会保険労務士の佐藤正明氏が語る。 「『長男に○分の1、次男に○分の1』と書いてあるが、足すと1にならなかったため無効になったケースが実際にありました。配分を間違えていると結局、遺産分割協議で決めなければならなくなります」 そのうえで、「遺留分」に配慮した分け方が相続をスムーズに進めるには望ましい。 「法定相続人は法定相続割合の2分の1もしくは3分の1の『遺留分』が認められています。兄弟の一方に偏るなど、他の相続人の遺留分まで侵害すると揉めて長引きやすいので注意してください」(同前)