経済産業省・物流企画室長の中野剛志氏に聞く CLO誕生で進むサプライチェーンの「手の内化」とは?
森:サプライチェーンマネジメントといいながら、これまでは本当の意味では機能していなかったということでしょうか。 中野:そうです。当然、リアルタイムで把握していません。理想をいえば、むしろ需要側からさかのぼって、上流の供給側に「いつ・何を届ける」という情報を、先に上流に提供すれば、上流のほうで準備をして製品を流せますよね。 でも、今はサプライチェーンをマネジメントできていなくて、下流の情報を上流に上げていないから、上流のほうは当てずっぽうで下流にいわれるままに製品を流しています。で、返品をしなきゃいけなくなったり、在庫を抱えたり、あるいは急に持ってこいといわれたりするものだから、積載効率は下がるといった状態です。 もっと効率がよくなる、積載効率が上がるだろうから、需要を予測して早めに上流にその情報を伝えるなんていう、下流の需要の情報を上流に逆行させて流すことは、ほぼやっていないはずですが、これをやることがものすごく重要です。もし、需要の変動を平準化することができれば、物流事業者は多重下請けに出す必要がなくなってきます。 「多重下請け構造の是正」とはよくいわれていますが、それは物流事業者の多重下請けを、例えば「2次までにする」といった対策ではどうにもならなくて、多重下請けは物流の需要の変動・波動が大きいために、物流事業者がすべてを抱えていると効率が悪いので、外に出す。だから、物流の需要の変動が大きいと、必然的に下請けは多重に階層化していくものなのです。 森:物流を平準化する必要があるということですね。 中野:おっしゃる通りです。だから、平準化をしなければなりません。平準化するためには、下流から上流に早めに情報を流すという、今までと逆の流れが必要になるわけです。 上から来るのを待っているだけだったのが、下から先にマネジメントするという、180度反対の発想です。それを実行し、物流の需要が平準化した時にはじめて、多重下請けをする必要はなくなり、層が薄くなる。そうなると、産業界への影響は非常に大きいのではないでしょうか。
森 隆行