<2025年どうなる家電量販店>「ケーズHD」は増収増益で回復、「上新電機」は阪神優勝セールのハードル高く、VAIOを買収した「ノジマ」は?
短期連載<2025年どうなる家電量販店>の最終回はケーズホールディングス(ケーズHD)と上新電機、ノジマの3社をみよう。25年3月期上期決算から各社の現状を振り返るとともに、注目ポイントをおさらいする。ケーズHDはアフターコロナで続いていた減収からの回復、上新電機は阪神タイガース優勝セールの前期実績比のハードルが高くて苦戦、ノジマはVAIOを買収するなどM&Aによる攻勢を強めている。 【写真ギャラリー】 ●コロナの反動減から脱出!ケーズHDは増収増益に ケーズホールディングス(ケーズHD)の25年3月期上期決算は売上高が3714億2000万円(前年同期比102.4%)、営業利益は118億5300万円(同109.6%)、経常利益は137億3000万円(同107.3%)、当期純利益は88億7600万円(同102.5%)の増収増益だった。 郊外のロードサイドに多く店を構えるケーズHDの業績は、コロナ禍は自宅待機やリモートワーク、おうち時間などの増加で昼間人口が増えて好調だったが、ここ数年はその反動減もあり減収減益で苦戦していた。増収増益で終えた今上期の決算からは、回復が見られる。 上期で前年を上回った商品は携帯電話(同119.1%)、エアコン(同110.9%)、理美容・健康器具(同105.7%)、調理家電(同102.4%)、クリーナー(同101.9%)だった。 一方で冷蔵庫、洗濯機、PC・情報機器、PC周辺機器、映像・音響商品(テレビ、ブルーレイ・DVD、音響商品)の前年割れが気になるところ。業績の本格的な回復には、これらの商品の回復がカギとなるだろう。 ただ、上期に不調だった商品の通期におけるポジティブな見通しも示している。冷蔵庫はフードロス対策で大容量タイプや鮮度が長持ちする機能を搭載するモデルが人気。2010年のエコポイント購入客の買い替え需要増も期待できる。 洗濯機は、タイパ家電としてドラム式洗濯乾燥機が人気だ。PCはAI搭載モデルによるPC市場の活性化に期待する。 特に25年10月のマイクロソフトによるWindows 10サポート終了(EOS)のビッグイベントに向けた買い替え需要は期待できる。映像・音響商品では、引き続き4K内蔵65型以上の大型テレビへの買い替え需要や、ワイヤレスイヤホンの「オープンイヤー型」に期待が高まる。 ●阪神タイガース特需の反動減で上新電機は減収減益に 上新電機の25年3月期上期決算は、売上高1919億8600万円(同97.2%)は減収だった。営業利益は18億3800万円(同40.1%)、経常利益は17億7700万円(同39.1%)と大幅な減益に陥った。 減収の要因は、23年9月の阪神タイガースのリーグ優勝セールだ。18年ぶりのリーグ優勝を果たし、オフィシャルスポンサーの上新電機は「リーグ優勝おめでとうセール」を実施。単月の売上高は前年同月比121.0%だったほど。この前期実績比のハードルが高く、店頭販売が減収になった。 なお、23年11月は阪神タイガースの38年ぶりの日本シリーズ優勝で、「日本一おめでとうセール」を実施し、大いに沸いた。単月の売上高は同118.9%だったことから、今下期の業績に決して小さくない影響を及ぼすことが予想される。24年11月のPOSデータに基づく月次売上速報は同81.9%だった。 利益面では、セールの影響以外の要因が気になるところ。それまで上昇傾向で推移した売上総利益が減少に転じ、販管費も過去10年間で最大になり、営業利益は過去10年間で最も厳しい結果となった。 ポジティブな点としてネット販売が前期実績並みの売上高を確保した。同社サイトの販売が順調に推移したことに合わせ、出店先の販売も構造改革の影響が一巡し、前期実績からの減収幅が縮小した。 また、物流体制の整備により、大型家電の全国配送や設置を可能にした。リアル店舗とECの両チャネルでの販売強化で売上高の拡大を目指す。 エアコンを除く主力の大型家電で軒並み前年を下回った。優勝セールの影響が大きかったとはいえ、期初に計画した台数を販売できなかったことが業績悪化の結果につながったとして危機感を強める。 ●VAIOを買収したノジマ、異業種のM&Aが続く ノジマがPCメーカーのVAIOの発行済み株式93%を取得して、25年1月に子会社化する。17年にネット事業のニフティー、23年にキャリアショップ運営のコネクシオや外国為替証拠金取引業のマネースクエアHDを買収するなど、ノジマはM&Aを加速している。 VAIOは、ソニーのPC事業を継承して14年に独立したPCメーカー。企画・設計から製造・販売、アフターサービスまで一気通貫でのワンストップを強みとする。 ノジマの業績にVAIOの効果がどう表れるかは今後のことだが、ノジマの25年3月期上期を振り返ると、売上高は3931億600万円(前年同期比109.8%)、営業利益は199億6800万円(同147.8%)、経常利益は214億4800万円(同146.2%)と増収および大幅な増益だった。売上高と営業利益は過去最高値を更新した。 増収の要因は、金融部門(同98.3%)を除く、デジタル家電専門店(同111.3%)、キャリアショップ(同105.6%)、インターネット(同104.2%)、海外(同127.9%)で前年を上回ったこと。 利益面でも、キャリアショップが前年の不振から各社で利益が改善されて大きく貢献。コネクシオは人員減少下でも前年以上の売り上げを確保した。経営の足を引っ張っていたキャリアショップの改善が大きい。 ノジマはVAIOについて「近年は、特に法人向け事業に注力し、事業を拡大している。今回の株式取得(子会社化)によりVAIOの事業運営方針や顧客との関係に変更はない」としている。 ただ、コンシューマ向けのPC販売でライバルである家電量販企業がこれまで以上に積極的に扱うのか不透明感は漂う。法人向け事業により注力するというのが大方の見方だ。VAIOの買収でどのようなシナジー効果を見いだせるかが焦点となる。(BCN・細田 立圭志)