<’20センバツ初の挑戦・カトガク旋風>/4 3年生全員がコーチ役 新チーム、裏方で支える /静岡
加藤学園は昨年9月21日、秋季県大会準々決勝で静岡と対戦した。4―4で迎えた九回裏、吉田光輝内野手(1年)が適時打を放ってサヨナラ勝ち。「借りを返してくれてありがとう」。7月まで前チームで甲子園を目指していた3年生11人がスタンドに応援に駆け付け、後輩たちに感謝の言葉を贈った。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 前チームは2018年の秋季県大会3位決定戦で、静岡に5―6でサヨナラ負けし、センバツの道を絶たれた。「打倒静高」の思いで練習に励み、4月の春季県大会で準優勝。夏の静岡大会はシード校として臨んだが、4回戦でオイスカに敗れた。一方、静岡は大会を制して甲子園に出場した。 後輩たちの静岡戦の勝利は、3年生にとって「リベンジ」の意味があった。前チームの主将、林口泰地さん(3年)は「甲子園に行けなかった悔しさを、同じように後輩に経験させたくない。3年生は全員同じ思いだった」と振り返る。 夏が終わっても3年生11人は裏方として新チームを支えてきた。遊撃手だった川上智己さん(3年)は「下半身が使えてない」と杉山尊三塁手(2年)に打撃フォームをアドバイス。大村善将遊撃手(同)には捕球や送球のコツを教えた。投手だった桜井龍星さん(3年)は右肘の靱帯(じんたい)を痛めた経験があり、投手陣のマッサージを手伝った。 9月の秋季県大会前、3年生も1、2年生と同じように頭髪を五厘刈りにした。3年生のともに戦う気持ちに応え、新チームは県大会で準優勝し、18年ぶりに東海大会に進出した。元三塁手の藤原颯二郎さん(3年)らは東海大会準々決勝の近大高専(三重)戦で、「引退した自分たちは、声を出すことしかできない」と力いっぱい応援。初の東海4強入りを後押しした。 献身的な3年生に勝又友則主将(2年)は「後ろ姿を見て追いかけてきた。チームの土台になってくれた」と敬意を抱く。大村遊撃手は「先輩たちは気軽に話せる身近なコーチ」と信頼を寄せる。 新チームがセンバツ出場を決めた翌日の25日、屋内練習場で3年生の卒部式があった。保護者ら100人以上が見守る中、米山学監督(41)は「人のために頑張り、人と一緒に喜べる生徒たち。次のステージでも活躍してほしい」と涙ながらに感謝した。 林口さんは夢の甲子園でプレーする後輩たちに、「甲子園出場は終わりではなくてスタート。人に尽くす思いを大切にして頑張ってほしい」とエールを送った。=つづく