40歳ルーキー・元プロ野球選手、人生のどん底から競輪で再起 『ガチ星』が今なお心に響く理由
競輪情報メディアでミッドナイト競輪の予想を執筆する研究ユニット「チャレンジ魂」のA子さんは、映画『ガチ星』(江口カン監督、2017年)に感銘を受けた競輪ファンの一人です。
7月から新人たちが本デビュー
チャレンジ戦をメインに楽しむA子さんは『ガチ星』公開当時、たまたま立ち寄ったDVDレンタルショップでこの競輪映画と出会いました。主人公がチャレンジ戦で戦うシーンにとても興奮したと語ります。 「『ガチ星』のさまざまな競輪シーンを思い出しながら、日々チャレンジ戦の予想に精を出しています。特にこの時期(7月)は、他ジャンル(スポーツやその他の業種)から転向したオールドルーキーや勢いのある若手など、多くの新人が本デビューしてくるので、わくわくしています」と話しています。 新人たちの本デビューに、『ガチ星』に登場したルーキーたちの姿が脳裏をよぎるようです。
転落人生と最低な裏切り
映画『ガチ星』の主人公・濱島浩司は、かつてプロ野球で投手として活躍しました。30代で戦力外通告を受け、引退後は自堕落な日々。 現実に向き合えず、夜遊び、酒、タバコ、パチスロに耽る日々。妻に去られ、愛する息子と会える時間も限られます。 すさんだ生活に、救いの手を差し伸べたのは親友でした。彼が経営する飲食店で濱島を雇い、再起を促します。しかし、濱島はその恩人の伴侶と許されざる関係に陥ってしまいます。 ある夜、道端を歩いていると、暗闇からその親友が現れます。濱島の裏切りを知り、ひどく動揺しむせび泣きながら「もう二度と近づかないでください」とだけ言い残し、消えてしまいました。再生を信じてくれた恩人に対する濱島の仕打ちに、見る者は言葉を失います。 濱島はどん底の人生から抜け出すため、藁にもすがる思いで、アラフォーにして競輪学校(現在の「日本競輪選手養成所」)に飛び込みます。なんとか卒業し、40歳のオールドルーキーとしてデビューを果たしました。 しかし、プロの競輪選手として新たな道を歩み始めたものの、怠惰な生活は相変わらずで、なかなか成績を上げられません。そんななか、あるレースでの落車事故をきっかけに、心を入れ替えることになります。病院でひたむきにリハビリに打ち込む若いルーキーを目の当たりにし、自分に足りなかったものを真に理解したのです。「分かった!」と喜びに満ち、身の回りの嗜好品を捨て去ります。以後、生まれ変わったように競輪に向き合い、少しずつですが成績を上げてゆくのでした。