「安心して穏やかにボケる」そのために「家族信託」と財産管理の秘策として使う方法
累計188万部の大人気シリーズ『おとなの週刊現代』が大幅リニューアル!週刊現代で大反響だった記事の中から、相続や在宅介護など、「死後の手続きと生前準備」にまつわる記事を、加筆のうえ、ピックアップ。<第1部 知らないと損する死後の手続きの新常識>、<第2部 今日から始める生前準備のすべて>、<第3部 身の回りの整理整頓。人生の最期を考える>の三部構成からなる『おとなの週刊現代 2024 vol.4 死後の手続きと生前準備』 (講談社MOOK) より一部抜粋・再編集して、人生の最期で失敗しないためのノウハウをお届けする。 医者が明かす「痛い死に方ランキング」ワースト50 『おとなの週刊現代 2024 vol.4 死後の手続きと生前準備』 連載第12回 『一度きりの人生だもの、「卒婚」と「死後離婚」という道があってもいいじゃないか』より続く
財産をどう管理するか
いよいよ日本は本格的な「大認知症時代」を迎えている。認知症の患者数は毎年増加。65歳以上の認知症患者は、'20年には約602万人だったが、'25年に約675万人にまで増えると予想されている。さらに、認知症は75歳以降に発症率が上がっていき、たとえば85歳を超えると男性は36%、女性は49%が認知症になる。もはや、認知症になるのは当たり前の時代になりつつあるのだ。
安心して、穏やかにボケるための準備
自分もいつ認知症になるともしれない―。そんなときに気がかりなのは、子どもや家族に迷惑をかけてしまうことだろう。準備が不足したために、認知症患者の家族が大変な苦労を強いられるという例はそこかしこにあふれている。できるなら、子どもや周囲の人には迷惑をかけずに「安心して、穏やかにボケる」方法を知りたいものだ。 そこで今回は、認知症になる前にやっておくべき準備を徹底的に調査。きちんと準備しておけば、認知症は怖くない。「その時」に備えて、元気なうちから用意をしておきたい。なにより最初に「おカネ」に関する準備を進めていただきたい。 認知症にまつわる困り事の筆頭は、突然本人の銀行口座が凍結されてしまい、家族ですら預金を引き出せなくなること。ほかにも、認知症になった人の財産に関する手続きができなくなるケースは多い。そうした状況に陥るのを回避するために「家族信託」がある。 しばしば、こうした困り事への対策として取り上げられる「成年後見制度」について聞いたことがある人も多いかもしれない。これは、認知症などによって判断能力が不十分な成人を保護するための制度で、後見人が本人に代わって財産管理などをおこなう仕組みだ。 認知症対策としてはたしかに有用な面もあるが、意外に使い勝手が悪い。司法書士の宮田浩志氏が解説する。 「認知症の発症前であれば、家族などを後見人に指定できる『任意後見制度』を利用できます。ただし、被後見人(=認知症になった人)の財産管理では、家庭裁判所などに詳細な収支報告を提出しなければならず、事務の負担がかかります。さらに、自宅の売却などは“財産保護”の観点から許可されないケースも多く、使いづらい」