新球団「くふうハヤテ」を指揮する元近鉄の守護神・赤堀元之がつかんだ成長の手ごたえ
「打撃アドバイザーの内田(順三)さんを筆頭に、コーチ陣が頑張っているので、僕自身はそれほどしんどいことはありません。少ない駒をやりくりしてうまく起用しなければいけないので、特に投手コーチの中村(勝)君は大変だと思います。そういう苦しい状況でも最後はヘッドコーチの高田(誠)さんがうまくまとめてくれるので、僕自身はしんどいとか、ダメだとか思ったことはありません。それは本当、ありがたいなと感じています」 待望の初勝利は7試合目(3月22日)、敵地・鳴尾浜での阪神戦だった。 先発は、開幕戦では4回10安打を浴びて7点(自責点5)を献上し降板した早川大貴。北海道江別市出身の早川はNPB12球団入りを目指し、地方公務員の職を辞してくふうハヤテに入団した。 早川は7回被安打3、与四球1、奪三振5、無失点の好投で期待に応えた。8回、1死1、2塁のピンチを迎えるも、三番手で救援したNPBで実績のある田中健二朗(元DeNA)が反撃を抑え、くふうハヤテは2対0で初勝利を掴んだのだった。 3月は初勝利後も連敗が続き2勝10敗1分。近年は「投高打低」と言われるNPBにおいて、うち3試合で2桁失点を喫した。しかし赤堀が言うように、試合に慣れてきた4月は7勝10敗2分と互角に戦える試合も多くなり、5月も5勝12敗1分と奮闘した。 「連敗中でも『選手が試合に慣れてくれば力を発揮できるようになり、勝てるようにもなる』と考えていました。課題はどれだけ投手が安定してストライクが取れるようになり、良い流れを作れるかどうかですね」 6月、取材に伺った時点では3勝10敗とペースは落ちていたものの、2桁失点の負けは1試合に減少。1点差で惜しくも逃した勝利は4試合と、赤堀が目指す「ファンが球場に足を運びたくなる、わくわくするような野球」も少しずつ実現できるようになりつつあった。 そんなチームにあって、特に成長著しい選手が、前述した元地方公務員の早川太貴投手。そして、くふうハヤテ入団後に医師国家試験に合格するという異色の経歴を持つ、竹内圭人投手だ。 (つづく) ●赤堀元之(あかほり・もとゆき) 1970年生まれ、静岡県出身。88年ドラフト4位で近鉄バファローズ入団。近鉄一筋16年の現役生活では守護神として最優秀救援投手(現在の最多セーブ投手)を5回獲得(NPB最多タイ記録)。92年には最優秀防御率も獲得した。現役引退後はNPBのほか、韓国プロ野球、独立リーグでも指導者を経験 取材・文・撮影/会津泰成