会話時間が少ないと50代でも「飲み込む」機能が低下
1日の会話時間が短いと、50代や60代であっても物を飲み込む嚥下(えんげ)機能が衰える可能性があることが、大分大学などの研究者が行った研究(*1)で分かりました。 ●中年期から嚥下障害があると誤嚥性肺炎を起こすリスクが高まる? 嚥下機能が低下すると、食べ物や唾液などが誤って気管に入りやすくなり、それらに含まれている細菌によって誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしやすくなります。誤嚥性肺炎は高齢者の主な死因の1つです。健康な老後を目指す上で、嚥下機能の低下を防ぐことは非常に大切です。 誤嚥性肺炎の患者のほとんどは高齢者ですが、50~60歳代で既に嚥下機能が低下している人では、年齢の上昇とともに誤嚥性肺炎のリスクが高まる可能性があります。そこで大分大学などの研究者たちは、そうした年代の人々を対象として、嚥下機能に関係するライフスタイルや特性を明らかにし、嚥下障害の危険因子を見つけ出そうと考えました。 嚥下機能の正式な評価には内視鏡が用いられますが、患者の負担が大きいため、より簡単な検査法がいくつか考案されています。その1つが、日本で提案された反復唾液嚥下テスト(RSST)です。 RSSTは、口の中に唾液をためて飲み込む動作を30秒間に何回できるかを調べて、その回数をそのままスコアとして用いるものです。RSSTスコアが3未満なら嚥下機能が低下していると見なされます。この検査の結果は、内視鏡検査の結果とよく相関することが示されています。 著者らが今回分析対象としたのは、50代と60代の一般の医師310人(年齢の中央値は59歳、6.1%が女性)です。医師なら、監視者がいなくてもRSSTを自ら正しく行えると考えました。対象者にインターネット経由でRSSTを行うよう依頼し、以下のような特性やライフスタイルについても尋ねました:年齢、性別、BMI(体格指数)、喫煙習慣、飲酒習慣、運動習慣、睡眠時間、1日あたりの会話時間(話している時間と聞いている時間を合わせて3時間超/1~3時間/1時間未満)、持病、常用している薬剤、嚥下機能に関連すると考えられる症状(口呼吸、口腔乾燥、鼻づまり、飲み込みにくいなど)の有無、1日の歯磨きの回数など。 対象者のRSSTスコアの中央値は12だったので、スコアが1~12の162人をRSSTスコア低値(嚥下機能が低い)、13~20の148人をRSSTスコア高値(嚥下機能が高い)としました。