会話時間が少ないと50代でも「飲み込む」機能が低下
嚥下機能が低いグループは1日の会話時間が短かった
特性とライフスタイルのそれぞれとRSSTスコアの関係を調べたところ、スコア低値群と高値群の差が有意になったのは、脂質異常症だった人の割合と会話時間のみでした。スコア低値(嚥下機能が低い)群のほうが脂質異常症だった人の割合が有意に低く、会話時間が1日に3時間未満だった人の割合は高くなっていました(スコア低値群が66.0%、高値群は50.6%)。会話時間が1時間未満だった人の割合には差が見られませんでした(18.5%と14.2%)。 脂質異常症を含む、関係する可能性のある要因を考慮した分析を行ったところ、1日の会話時間が3時間未満であることは、RSSTスコア低値の独立した予測因子であることが示されました。 今回の研究では、1日の会話時間が少ない人には嚥下機能の低下が見られやすいことが示されました。著者らは「今回得られた結果が、医師以外にも当てはまるかどうかを確認するために、一般の人を対象とする大規模な研究を行う必要がある。また、会話時間を増やすことが誤嚥性肺炎予防になるのかどうかを検討する試験を行うことが望ましい」との考えを示しています。 なお、RSSTスコアを考案した研究者たちが、健康な若年者(19~47歳)30人と健康な高齢者(59~82歳)30人を対象にRSSTの回数を調べたところ、若年者では最低が4回、最高は10回(平均は7.4回)、高齢者では最低が2回、最高は10回(平均は5.9回)だったと報告しています(*2)。 今回対象となった医師のRSSTの回数の中央値は12回とかなり高くなっていましたが、これについて著者らは、「医師の健康意識が高いため、またはRSSTという検査に関する専門知識を有するためである可能性はあるが、より正確に評価するには対面で検査を行ったほうが良い」との考えを示しています。 *1 Hagiwara A, et al. Cureus. 2023 Oct 29;15(10):e47921. *2 小口和代ほか。 リハビリテーション医学。 2000; 37(6):375-382. (大西淳子=医学ジャーナリスト)